第24話 勝利
国民は固唾を飲んで選挙特番を見ていた。午後8時の投票終了と同時に、各局が一斉に声を上げた。「当確です!一党の一条候補に当確が出ました!!」「当確です!民自党の上川候補に当確です!!」「当確です……」その後も一党、民自党両陣営の当確が次々に出され、その数は拮抗していた。開票から2時間が経過した時点で、一党140名、民自党138名、その他野党と無所属が28名であった。しかし東京など大都市圏の開票が進むにつれ、異変が起こった。政党別得票率において、一党が民自党を引き離し始めたのである。当然、比例の獲得議席数も一党が民自党を上回り始め、それに呼応するように小選挙区の激戦区においても一党の候補者が民自党の候補者に競り勝つ場面が増えてきた。 その日の深夜、すべての当選者数が確定した。民自党198名、その他野党と無所属32名、一党…235名。ついに一党が民自党を抑え、過半数の議席を獲得した歴史的瞬間だった。 翌日のニュース、ワイドショーは政権交代の話題一色だった。「昼からドン」の司会者、大門は、まだ興奮冷めやらぬ状態であったが、意識的に声を抑えて言った。 「民自党が破れました。わずか一年前、一強と言われた民自党を抑え、一党が235議席を獲得し、これから日本のかじ取りを担うことになります。佐久間先生、今回の結果をどう分析されますか?」「前にも申し上げましたが、無党派層が動いたことがその一番の原因です。彼らは民自党の政策に疑問を持ち、次々に露呈する民自党議員の不祥事に怒りを感じながらも声を上げることはなかった。野党の体たらくも手伝って、もう政治に何の希望も見いだせなかったのでしょう。しかし一党の、一条健の登場によって状況は一変した。それが今回の結果です。」「やはりそうなんでしょうね。しかし、前半はいい勝負でしたが…」大門は開票速報の時系列をまとめたボードを指さしながら言った。「東京などの大都市圏の開票が進むにつれ、一党が民自党との差を広げ始めた。これは一条党首の政見放送が効いたのだと思います。あの時述べた政策をどう実現していくのか、私も非常に興味がありますし、世界も注目しています。」「世界も…ですか?」「はい、彼は有名人ですから。皆さんが想像している以上に…。」 その日、一党の総会も開かれていた。一条は選挙期間中、全員に政策立案のレポートを提出させ、そのすべてを読み込んだ上で、235名の議員を財政、教育、経済、外交、防衛…といった10のグループに分けた。各グループは20名から30名で構成され、これからは、そのグループごとに法律案や政策を作成するよう要請した。つまり、「官僚に丸投げするのではなく、自ら知恵を絞って国民のために働きなさい」ということだった。グループが提出した案は、閣議で徹底的に議論された後、国会に提出する運びとなる。一条はすべての議員にその分野のプロになることを要求したのである。 翌日、特別国会が召集され、一条が第103代内閣総理大臣に指名された。歴代最年少となる38歳の内閣総理大臣の誕生であった。
BEYOND 総理大臣 一条健 @eifuji
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