第43話

「皆さん、今年の秋都祭は例年以上の盛り上がりを見せております」

 中央講堂では、生徒会長である空良がスピーチを終える所だった。

「最後まで気を抜かず、事故の無い様、楽しい学園祭を創り上げていきましょう」

 主に1年生が主体の観客席から、大きな拍手が起きる。

 その反応に満足した空良は、悠然とした足取りで階段を降り始めた。


 そこに、司会進行係からマイクを受け取った真琴のアナウンスが入った。

「以上、生徒会長・・・もとい、本年度ミスター都高の國府田空良さんから『みんな、俺に投票してくれて有難う!!』の言葉でした」

「なっ!?」

 場内がドッと沸く中、空良は見事に階段を踏み外した。



「えーっと次は南館2階、映研の自主制作映画上映前ゲスト挨拶で、その次はクッキング部の試食会ね」

 スケジュール帳を片手にした真琴は、マネージャーよろしくヘッドホンを付けて本部と連絡を取っている。

「ひかり、10分以内の最短ルートを教えて頂戴」

『分かった』

「もう好きにしてくれ・・・」

 SPの様な体育会系男子役員が両脇を固める(主に逃走防止の為だが)中、げんなりした表情の空良は諦め口調で言った。

「ただし、俺らしくやらせて貰うからな」

「うん、いいよ」

 その言葉を待っていたのか、ヘッドホンを外した真琴はニコッと微笑った。

「頑張ろうね、ちゃんと付いていきますから」

「あ、ああ」

 何だか変な感じになった空良は、やや口籠って顔を背けた。


 彼の目的は1つ

「みんなの笑顔で一杯の秋都祭にする事」

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