第40話
秋都祭第1日
通称「プレ祭」は、秋晴れの爽やかな日となった。
天気予報通りだと、明日も晴天が期待出来そうである。
ところで「プレ祭」と呼ばれる理由は2つあった。
翌日の一般公開日に的を絞ってギリギリ迄準備を進めているクラスやグループがある事。
学内生徒のみ参加という事で、内輪ムード全開である事。
そして、今年はもう1つ・・・。
「似合ってるわよ、空良君」
お腹を抱えて笑いながら、真琴が言った。
純金の縁に筆文字で『僕が本年度のミスター都高です(ハート)』と書かれたタスキを掛けられた空良は、ワナワナと身体を震わせている。
「く、屈辱だ・・・」
先程生徒会役員及び秋都祭実行委員の男子達に押さえられ無理矢理タキシードまで着せられた彼は、うっうっと嘘泣きを始めた。
「さて、ミスター都高は予想通り早々と当確したわね」
涙ぐむ生徒会長を抑えて事実上秋都祭の総元締めとなっている真琴は、不敵な笑みを浮かべた。
「ミス都高はギリギリになるかな。頑張ってね井隼さん」
「は、はあ。どう頑張るんでしょうか?」
中間発表で上位争いに加わっていた静香は肩をすくめる。
真琴は気にせず空良に向き直った。
「ではミスター都高さん、先にPR活動をスタートさせるから付いて来なさい」
彼女がスタスタと歩き出すと、空良の両脇で彼の腕をがっちりロックしている男子役員(体育会系)も動き始める。
「ま、待て紺野、生徒会長と副会長が揃って大本営を空けてもいいのか?」
「私、どちらかと言うと行動派なの」
必死で抵抗を見せる空良に、真琴はニヤリと笑った。
「それに、留守宅はひかりちゃんに任せるから大丈夫だよ」
「了解」
書記長の倉島(くらしま)ひかりが落ち着いた声で返答した。
「井隼さんも居るし、実行委員会もちゃんと機能しているから問題無いでしょう」
「という訳、さぁ行くわよっ!」
「助けてくれ~」
悲鳴を上げる空良を引き摺って行く一団を、静香は苦笑ながら見送った。
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