第39話
「え?」
詩織は首を傾げて答えた。
「それは、やっぱり凄い先輩だと思うよ。全国大会準優勝した人だし、指導も的確で解り易いし」
「だよね、でも何か違うんだよ」
観月は、やや不満気に半肯定した。
「昔のソラ君は、もっと自由だったんだ」
「自由?」
「まあ色々あったから、今みたいになっちゃったのかも知れないけど」
「・・・」
空良と里香の事は、以前から詩織の耳にも入っていた。
実際に色々話をするようになったのは入部してからだったので、彼女亡き後の彼がどう変化したのかは分からないのだが。
「だから、こう思う事にした」
唐突に観月が口を開いた。
「旅に出てるんだ、って」
「たび?」
うーんと大きくのびをした観月は、屈託の無い笑顔でこう言った。
「私が本気で惚れたソラ君は、旅に出ている真っ最中なんだ~ってね」
「・・・」
「だから帰ってくるまでは、っと、かやりん何フリーズしてるの!?」
目の前で茹蛸の様に真っ赤な顔をしている詩織に気付いた観月は慌てて訊ねた。
「だ、だって、今さらっと凄い事言ったから」
「ああ、そっか」
ここに来て、観月もようやく自分の発言を思い出した。
「私、そういうトコロあんまり態度に出さないからね。分からなかったでしょ?」
「う、うん。私はてっきり月島さんが・・・」
「ぷっ」
観月は思わず吹き出した。
「よしのんは分かり易いからねぇ」
「あ、うん」
「応援してるんだ、私」
「え」
「大切な友達の恋が、いつか叶いますようにってね」
「観月ちゃん・・・」
どう声を掛けて良いか分からなくなった詩織の目の前で、観月はパンと手を合わせた。
「ほい、攻守交代」
「へ」
「今度はかやりんの恋バナを聞かせて貰うわよ」
「え、え」
「ちゃんと話すまで帰さないから、覚悟しててねっ」
「ええーっ!!!!」
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