第38話

「そう言えば、すごかったね、橘女子」

 詩織はやや誤魔化し気味に話を進めた。

「射技や体配も洗練されてたし、隙が無いとはああ言う事を言うのね」

「そぉ?」

 平然とフォークを進めている観月。

「え」

「それでも、かやりんは真っ直ぐ前を向いて逃げなかったじゃない」

「あ、あれは観月ちゃんが勇気をくれたからで・・・」

「かやりん」

 戸惑う詩織の前に、にゅっと苺が突き出された。

「・・・あなた、いい弓人になるわ」

 嬉しそうな表情を隠さずに、観月は話し始めた。

「だから目標は高く高く持っておいて貰いたいんだ。小さく纏まんなよ~ってね」



「うん、有難う」

 彼女の優しさに触れて、詩織は心の中でちょっと嬉し泣きをした。

 春の時点では迷って決めきれなかったけれど、思い切ってこの部に入って本当に良かった。



「ま、殆どがソラ君の言葉の受け売りなんだけどさぁ」

 最後の一切れを口に放り込んだ観月は、幾分謙遜して頭を掻いた。

「そうなんだ」

 彼女らしい誤魔化しを、詩織はそっとしておいた。

 すると、突然観月が質問を投げ掛けて来た。


「ね、かやりんはソラ君の事どう思う?」

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