第29話
「え、え、私何か先輩のツボに入る事言いましたか!?」
我慢出来ずにお腹を抱えてゲラゲラ笑い出した空良は、頭の上に?マークが乗っている佳乃に向かって言った。
「月島、今のお前、すごく可愛いな」
「ふえっ!!??」
虚を突かれたその言葉に、佳乃は耳まで真っ赤になる。
ようやく笑いが収まって来た彼は、優しい顔をして言葉を続けた。
「初陣でそこまで考えている奴なんて、そうは居ないぜ。それだけでも十分資格があるよ」
「落の、資格ですか?」
おずおずと顔を上げて、佳乃は訊ねる。
「ん、まあそうだな」
空良は半分だけ正解、という表情を見せた。
「ただし、常に気を張っているといつか潰れてしまうぞ。持ち前の天然キャラも忘れないようにな」
「はい、って褒め言葉なんですかそれは⁈」
数時間前に何故か屋敷川高校の女子選手を怒らせてしまった事を思い出した佳乃は、やや不安気に応えた。
(今は、弓とまっすぐ向き合ってくれるだけでいい)
目の前で頭を悩ませている後輩を眺めながら、空良は思った。
(あせらなくて、いいんだ)
「・・・スイッチ」
「え」
「要はスイッチの切替だよ、月島」
空良は、星空に向けて親指と人差指を伸ばして言った。
「取敢えず、次は秋都祭にスイッチ切替だな」
「・・・はい」
彼と同じく夜空を眺めていた佳乃は、先程までのモヤモヤが少し晴れている事に気が付いた。
【twentyall Ⅱ~ツキノヒカリ】第1部 了
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