第27話
「女子個人戦、優勝おめでとう」
「やったねシズ」
「うん、ありがとう」
優勝トロフィーを手にした静香は、仲間の祝福を幾分気恥ずかしそうに受け止めていた。
「16射14中、昨年の里香先輩に続いてこれで二連覇達成ね」
「今日はたまたま運が良かったのよ、競射になってたら分からなかったわ」
「兎に角、団体準優勝、個人も優勝・4位・5位と全員入賞したんだから上出来だよね、ソラ君」
「それは俺が言う台詞だろうが」
流れに任せて進行しようとする観月を制した空良が、軽く咳払いをした。
「まあ、確かに良くやったと言うべきだな・・・だが」
真面目な顔をした彼は、言葉を続けた。
「打ち上げは会費制に・・・」
「さーみんな行くわよォ、今日は空良部長のオゴリだぁ!!」
絶妙の間で割り込んだ観月の掛け声で、都高弓道部の輪がドッと崩れた。
「相変わらず、都高は賑やかだね」
「すみません」
苦笑しながらやって来た外西に、静香は頭を下げる。
「外西さん、いらっしゃってたんですね」
「OBとしても今日の試合は気になってね。個人優勝おめでとう」
「有難うございます。団体戦は男女とも屋敷川に持って行かれましたが」
「インターハイ地区予選以降、かなり力を入れて練習したからね。もう都高には不覚を取らないつもりだよ」
「では、キンキ大会本選で勝負ですね」
そう言って、二人は笑った。
「じゃあ、そろそろ俺は母校のグループに戻るよ」
「はい」
「あ、井隼さん、これ」
帰り際、外西は思い出したようにポケットから封筒を取り出して彼女に差し出した。
「何ですか?」
「直接言えばいいのに、わざわざ先輩にお使いをさせるとはね」
「え」
「ホント、困った元エースだよ」
悪戯っぽい笑みを浮かべて、外西は歩いて行った。
「・・・」
封筒を裏返して宛名を確認した静香は、数分間その場に固まっていた。
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