第25話
「ほうほう、ここが噂の味菜ラーメンですか」
真琴の影響で最近ラーメンに詳しくなって来た静香が、眼鏡をクイっと上げる。
「当然チャーシュー多めでね」
もう割箸を手にした観月が、メニューを物色している。
「でも、いいんですか?」
佳乃が、おずおずと空良に訊ねた。
「え、何が?」
水係となった部員からコップを受け取った空良は、キョトンとして聞き返した。
「私達だけじゃなく、部員全員のお昼をご馳走して下さるなんて、本当に大丈夫なんですか?」
「はあぁ!?」
「わっバカよしのん、最後にバラして逃げるつもりだったのに何先に言ってるのよ」
「ちっ、計画が狂ったわ」
観月と静香の反応に、空良のこめかみがピキっと引きつった。
「誰がそんな約束したんだー!!」
「いいじゃん、唯一の先輩なんだしさ。頑張ってる後輩達に対して思うトコロは無いの?」
「それとこれとは別だろうが」
「じゃあじゃあ、勝利のお祝いってコトで」
「まだ遠的が終わっただけだろ」
開き直った観月の発言に、空良はくわっと牙を見せた。
「それに終わったら終わったで『疲れたので糖分補給にケーキバイキング行きたい~』とか言い出すつもりだろうが」
「くっ、ソラ君エスパーなの??」
「本当だったのか・・・」
がっくりと肩を落とす空良。
ここで、ようやく佳乃が口を挟んだ。
「空良先輩、無理しないで下さい」
「・・・月島」
「観月ちゃんの言葉を鵜呑みにして、みんなお弁当はおろか電車賃位しかお金を持って来なかったのがいけないんですから、気にしないで下さい」
ザクッッ!!!
「ん、今何か聞こえたわね」
「佳乃ちゃん・・・天然だから尚更凄いわ」
「え、私何かマズい事でも」
「だー分かった、いいぞオゴリで!!」
空良の瞳に炎が点った。
やったーと歓喜の声を上げる部員達に、彼はビシっと指を突き付けた。
「ただしメニューは1品縛りだ。近的まで時間もあまり無いし、大将にも無理させられないからな」
「泣かせるねェ、ソラ君」
カウンターの向こうで、店主がくっと手拭いで顔を押さえる真似をした。
「了解」
観月は椅子に深く腰を掛けて言った。
「食べたいものは、みんな同じだろうしね」
「え」
「大将、味菜ラーメン、11人前!!」
「ヘイ毎度っ!!」
店の看板メニューを指してそう言った彼女に、異論を挟むものは誰も居なかった。
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