第23話

「風が、凪いだ」

 目を閉じていた静香は、ゆっくりと弓を打ち起こした。

 十分な会を保ち、一気に引き放つ。

ひゅうん、という音の後、大的の中心に突き刺さるパアァンという音が響いて来た。

「射ぁーっ!!」

 矢道の横に並んだ都高弓道部員が、的中の声出しを行う。

「うーん、やっぱ人数が増えると応援も違うわねェ」

 上機嫌な観月は、静香に続けとばかりに矢を番えた。


 落で立っている佳乃は、自分でも不思議な位、冷静に周囲を眺めていた。

 あの学校の選手、緊張しているのか体配がカタい。

 今射った人の矢は、伸びが足りない。

 色々なものが見える、分かる。

 でも、決して嫌な気分じゃない。


(これが、団体戦・・・)

 佳乃は思わず、介添場所に立つ空良の方を見た。

 的中させた観月が右手で軽くガッツポーズをしたのを窘めていた彼は、佳乃の視線に気付くとこう言い放った。

「月島、思い切って行け」

「はいっ!!」

 佳乃のスイッチが瞬時に切り替わった。

 視線が、遥か先の大的だけに向けられる。

(いざ、勝負っ!!)




「橋は、まだまだ続いている・・・」

 佳乃の会心の的中を見届けた空良は、誰とはなしにそう呟いた。

「その先にあるものは、何だろうか・・・」

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