第22話

「遠的スタート、か」

 約60m先に並んでいる巨大な的を見て、佳乃は呟いた。

「不満か?」

 その様子を見ていた介添役の空良が訊ねる。

「いえ、全然」

 言葉通り良い感じに気合が乗っている彼女を見て安心した空良は、アドバイスを送り始めた。

「体幹線は崩さずに狙いを付けて、拳全体で矢に力を乗せる事」

「はい」

「あと、1つの的を3人で射つから、もし的矢に異常があったらすぐ俺に伝える様に」

「何かすごく慎重ですね」

 黙って話を聞いていた静香がクスっと笑う。

「去年はそれで2本損したんだよ」

 改めて当時の事を思い出した空良は、苦々しい顔で応えた。

「大丈夫、私達はソラ君みたいにドン臭く無いからね」

 面白がって観月が茶化した。

「ほう、ではお手並拝見と行こうか」

 空良はニヤリと笑った。

「さあ、もうすぐ立順だ。行って来い」

「はい」「OK」「わかりました」



「國府田先輩」

 3人娘を送り出した空良に、一人の女子部員が声を掛けた。

「月島さん達、大丈夫ですよね?」

「ああ、心配無いよ」

 空良は笑って、彼女の方を向いた。

「だから今日はちゃんとあいつらの射を見ておく事。次からは茅野達にも頑張って貰わないといけないからな」

「は、はいっ!!」

 姿勢を正して返事をした女子部員、茅野詩織(かやのしおり)は、やや紅潮した顔を再び射場に向けた。

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