第19話
たまに、自分の勘の良さが嫌になる事がある。
現に今、静香は御角の言葉の奥にあるものに気が付いてしまった。
「そう、ですか」
とりあえず平静を装った彼女は、そう応えるのが精一杯だった。
でも、頑張ってもう1つ勇気を出してみた。
「あったんですね、気分を変えたい出来事が」
「・・・まあ、ね」
(やっぱり)
静香の心に、甲矢が刺さった。
理由は分からない、分かりたくない、喪失感。
全身から黒いもやっとしたものが滲み出て来るのを必死に抑えている彼女に、御角はふと訊ねた。
「何日?」
「・・・え」
「学園祭、秋都祭だっけ、いつやるの?」
「あ、26日です、一般公開日は」
あたふたと頭の中のスケジュール帳を手繰った彼女に、彼はニッと笑った。
「了解、じゃあ予定開けておくよ」
「へ??」
「井隼さんが考えたイベント、俺も生で見たくなっちゃった。いいかな?」
「・・・は、はい、喜んで」
「どういたしまして」
(いいよね、少し位は)
切符を買いに改札方向に歩き始めた御角を眺めながら、静香は今日どこまで彼の好意に甘えたらいいのかを嬉しそうに考えていた。
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