第17話

「へえ、一本中に入るとこんな店があったんだ」

 この辺りは割と通い慣れた場所だったので、御角は余計に感銘を受けていた。

 年季が入った木造長屋の店内には、昭和の香りがそこかしこに漂っている。

 マニアには垂涎モノであろうプラモデル群を抜けたところに、静香の目指していた場所があった。

「ここです」

「すげ・・・こんなに沢山あるのは初めて見たよ」

 御角は眼前に拡がる光景に思わず目を奪われた。

 そこには、卸問屋ならではの大小様々な種類の花火が所狭しと並べられていたのだ。

「私の、秘密の場所なんです」

 早速目当ての品を物色し始めながら、静香は話を続けた。

「今年の学園祭、私の学校では昨年に続いて校庭を花一杯にする事が決まったんです。でも何かもう1つ付け加えたくて・・・それなら後夜祭で花火を打ち上げたらどうですか、って提案したんです」

「へえ」

「あ、勿論許可は取りましたよ。防災管理体制や非常時の避難経路もバッチリですし」

(やだ、私何言ってるんだろう)

 支離滅裂な言葉に顔を赤くした静香は、御角がスッと花火の山に向かうのを見た。

「よし、手伝うよ」

「え!?」

 虚を突かれてポカンとしている彼女に、御角は言った。

「素敵なプランじゃないか。俺も花火を選ぶの協力させて貰っていいかな?」

「は、はい」

 慌てて彼の傍に駆け寄った静香は、俯いたまま小声で呟いた。

「・・・有難う、ございます」

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