第2話
喫茶フルール
落ち着いて店内を見るのは今回が初めてだったが、大切な時間を過ごす空間としてはとても良い造りをしていると感じた。
「お待たせ」
そんな事を考えていた國府田空良の席に、1人の女子生徒が現れた。
目元が少しキツめだが、愛らしさは隠されていない。
長くて真っ直ぐな黒髪の左側を少し大きめの藍色リボンで括っている。
「安崎さん」
「こんにちは國府田君、ホッカイドウ以来だね」
私立橘女子高校の安崎亜紀子は、空良の向かいにストンと腰を下ろすと店員にハーブティを注文した。
「そう言えばちゃんと言ってなかったね、準優勝おめでとうございました」
「安崎さんも、同じく準優勝おめでとう」
「あー口惜しい」
場を和ませる為わざとおどけてみせた安崎に、空良はつられて笑った。
ちょうど運ばれて来たハーブティをストローで一口含み、彼女は改まって訊いた。
「で、どうして今日私を誘ってくれたの??」
「ん」
「キャラじゃないけど、少し顔を赤らめてドキドキしてみた方が良かったかな??」
「俺ではドキドキにならないでしょ」
期待はしなかったがあまりに天然な返答に安崎は少し呆気に取られた。
が、すぐに立ち直った。
「むー、では空良君の話を聞きましょう」
「実は、お願いがあるんだ」
本題に入ると、空良は割と直球勝負に出た。
「なに??」
「見せてほしい・・・」
「・・・はい??」
「だから、見せてくれないかな、君の」
「えっ、えっ!!」
彼女の手元で、グラスの中で溶けた氷がカランとひとつ音を立てた。
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