第49話 お知らせ
「月城、お前がなんでここに……?」
俺が靴を履き替え、そう言うと、月城は嬉しそうに微笑む。
「びっくりした? 私、ゆーくんのことを迎えに来たの〜♪」
そして、そう言う月城の横には美月まで。
「それに……」
「美月のこと? ふふ、ついでに連れてきちゃった」
しかし、当の美月は俺の事など心底どうでもよさそうにスマホをいじっている。なんとも複雑な気持ちだ。
「大丈夫〜! 私はゆーくんの気持ち分かってるよっ♡ ようするに『俺のお迎えは月城一人で十分だ』ってことだよね〜♪」
「あ、ああ」
俺は戸惑いながらも適当に受け流す。……もう、月城の扱いにも慣れたものだな。いちいち口ごもっていた、あの頃が懐かしく感じる。
「それはそれとして、なんでわざわざ学校まで迎えに来たんだ?」
俺がそう言うと、再び月城は嬉しそうな表情を浮かべた。
「ちょっと、ゆーくんに嬉しいお知らせがあってね〜♪」
「お知らせ?」
「うんうん! ……あ、でも今は……」
月城がそう言ってあたりをみると、既に帰り際の生徒たちが続々と教室から出てきていた。
中にはこちらをみながらコソコソ話している奴もいる。それもそのはず、この三人の中で俺以外は全員有名人だ。
たしか前にも似たようなことがあって、面倒なことになったからな。噂が立つ前に早いところ切り上げた方がいいだろう。
そんなことを考えていると、スマホをいじっていた美月が口を開いた。
「ほら、タクシーつかまえるよ」
そう言って美月が学校を出ると、月城と俺も美月の後をつけるように足を進める。
「それじゃ、お知らせはタクシーで教えてあげるよ♡」
「楽しみにしててね!」
「嬉しいお知らせか……楽しみだな」
俺はそうつぶやき、学校を後にした。
♢ ♢ ♢
「ふふふ、気になるでしょ〜?」
席に着いた月城は体を俺にぐっと近づけ、早速話を始めた。
しかし、タクシーの後部座席というのは二人乗りな気がするが、月城が妙に俺との距離を詰めているせいで三人全員乗れてしまっている。
美月に至っては寧ろゆとりを持って座れている。またもや暇そうにスマホをいじっている。申し訳ないようで複雑な気持ちだ。
と、俺は月城に離れろなんて言ってみようとしたが、勿論の如く、俺が月城に向かってそんなことを言える訳もなく、きつきつななか話を続けた。
「ああ、お知らせって一体なんなんだ?」
俺がそう言うと、月城は自信満々な表情を浮かべ口を開いた。
「そう! 私、ライブすることになったの〜! もちろんゆーくんも来るんだよ?」
「ライブ? そりゃよかったな、俺も行きたいよ」
どうやらライブをすることになったらしい。まあ月城はアイドルだから当然と言えば当然だが。
まあ、久しぶりに行ってみたい気をもするな。
「やっぱり?! やっぱりそうだよね!? ゆーくんもみたいよね?!」
「ああ」
「ゆーくんっ♡♡ ……そうそう! そしてライブの後は、ゆーくんの誕生日パーティでもしよっかな〜って♡」
月城はそう言うとキラキラした目で俺を見つめる。誕生日パーティか……いつぶりだろう。嬉しいお知らせってこのことか?
「……そういや、誕生日も近かったな。開いてくれるのか?」
「勿論! ゆーくんのためなら何だってするよ〜!」
それから俺たちはたわいもない話をしながら家へ向かっていった。
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