第48話 朝
月城はそういうと、一目散に走っていった。少しまずいことになってしまったかもしれない。
美月が何をしに来たのか分からない以上、月城の機嫌は保証されない。
そして次の瞬間俺はハッと閃いた。
♢ ♢ ♢
私がドアを開けると、眠そうに目を擦る美月がいた。
「月城おはよ〜」
美月はそう言って玄関に入り込んでくる。一体美月は何をしに来たのだろう。
こんなに朝早くからくるなんて、きっと大事な話に違いない。
しかし、朝の件もある。いくら美月と言っても油断はできない。
……いや、でもゆーくんは「俺はずっと月城のモノだよっ♡」なんていってくれたし! 今日は一日ハッピー♪ この幸せを美月一人が壊せるわけないよねっ♪
「おはよ。……それで美月、今日はどうしたの?」
私がそう言うと、美月はさらに足を進めて続けた。
「あ、そうそう。月城にちょっと話したいことがあって……」
私に話。よし。ひとまずセーフ。ゆーくんに話じゃなくてひと安心。
と、私は思わず笑みがこぼれる。
「ふーん、そっか。いいよ、なかはいって」
「お邪魔しま〜す」
そして私たちが部屋の中へ入っていくと、なぜかゆーくんがどこにも見当たらなくなっていた。
確かさっきまでここにいたはずなのに、ゆーくんの匂いもしなくなっている。
「どこにいるの? ゆーくんー?」
「あれ? あの子、今日はいないの?」
私と美月が声を揃えてそう言うと、玄関の方からゆーくんの声が聞こえた。
「悪いな月城……っ! 俺はもう学校へ行かなきゃいけない……っ!」
そういえば今日は平日。ゆーくんが学校に行くのにも頷ける。
でも、流石にまだはやすぎない……? なんて考えていると、ゆーくんは急ぐようにドアを開けた。
「それじゃ……っ!」
♢ ♢ ♢
教室の窓、俺はぼんやりと空を眺めていた。俺が玉砕をしたあの日。あの日もこんな空をしていただろうか。
俺は不意に思い出す。月城と出会った日の事、確か街案内をしようとしたんだっけな。
月城と出会った公園のベンチを遠くに見つけると、月城との嫌な思い出が次々と浮かんできた。
嫌な思い出のはずなのに、不思議と嫌な気はしなかった。
……思わずあの状況に耐えかねて学校へ来てしまったが、特にすることがないな。
いやでも仕方ないだろう。修羅場になりかねないあの状況にいるよりもいくらかましだ。
もし仮に俺の話でもなったら、たまったもんじゃないからな。
することがない……が、なんとか乗り切るしかない。俺は授業の予習でもしようと、ノートを広げた。
♢ ♢ ♢
「……礼」
帰りのホームルームが終わると、俺は一目散に教室を飛び出す。
さっきからスマホの通知が鳴り止まない。恐らく月城からだろう。
何かあったのだろうか。俺は下駄箱へ行き、靴を履き替える。
まさか朝の件か? あの二人なにをはなしたってんだ。
俺が靴を履き替え、外に出ようとすると、なにやら聞き覚えのある声が聞こえた。
「ゆーくんっ♡ おかえりっ♡」
月城? それに美月? こいつら一体なにを?
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