第47話 モノ
「はあ……」
チャイムの音に邪魔をされた月城は、拗ねてしまったようにためいきをついた。
「お、俺が出てこようか……?」
咄嗟に俺がそう言うと、月城は体を起こして続けた。
「ううん、大丈夫。相手が女だったら嫌だし」
「そうか」
俺はそう呟きつつも、ホッと胸を撫で下ろした。
間一髪と言ったところだろうか。あのままいっていたら完全にアウトコースだった。
まだ体に力が入りづらいような気がする。が、まあ気のせいだろう。
これはきっとパニック状態だからであって、月城の仕業ではない。そう思いたい。
しかし、一体誰が鳴らしたのかは知らないが、チャイムをならした人物には感謝せねばな。
俺がそんなことを考えていると、既に月城がそのチャイム主と対面していた。
♢ ♢ ♢
「……はい」
「月城、朝早くからごめんね。ここ開けてくれない?」
答えるチャイム主の声を聞いた途端、月城は目を丸くしてた。
そういえば、俺もどこか聞き覚えのある声のような気がした、と同時に嫌な予感もした。
「えっ? 美月だよね……? こんなじかんにどうしたの?」
ああ。恐らく俺の予想は的中だ。
「うん。ちょっと話があってさ」
「話ね……そう」
月城は案外ノーリアクションでそう言ってオートロックを解除した。
そして同時に俺の方へ向かってきた。
……どう考えてもまずいことになったような気がしたんだが、意外と月城の方は無反応なのか?
なんて考えていると、全く無反応でなかった月城は、もう俺の目の前まで迫ってきていた。
「ゆーくん?! まさか、美月を家に呼んだのはゆーくんなの?!」
「っ違う違う! 第一、俺と美月が話したことなんて殆どないだろ!」
と、俺は鬼気迫る表情を浮かべる月城をなんとか説得する。
冷静に考えてみれば俺と美月の接点はほぼない。さっきの友達追加事件もきっと誤解だ。
よって俺には全くの無関係! 月城の話に決まっている。
「でも美月、話があるって」
「そんなの、俺には関係の無い話に違いな──」
「──やっぱり美月は、私からゆーくんを奪いに来たんでしょ?! ゆーくんを自分のモノにしようとしてるんでしょ?!」
落ち着いたかと思えば、再び鬼気迫る表情を浮かべる月城。ほんとうに情緒が不安定なやつだ。
「落ち着けよ、月城。俺は何があろうと、美月のモノになるつもりはない」
「ゆ、ゆーくん……っ♡♡」
月城は目をキラキラと輝かせる。が、俺はそもそも誰のモノでもない。
美月が俺を奪いに来たも何も……俺は。
「そっか、そうだよねっ! 私、心配しすぎちゃったみたいっ♪ だってゆーくんは、ずーーっと私のモノだもんねっ♪」
月城がそういうと、再びチャイムが鳴る。玄関まで辿り着いたってとこだろう。
「あ、きた! 鍵、開けてくるね!」
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