第40話 いざ勝負
店員からパスタをうけとると、ニコニコしている月城を他所に、俺は「いただきます」と小さく呟く。
すると、月城は置かれたパスタをみて目を輝かせた。
「うわぁ〜! やっと来たね! ゆーくんっ♡」
「……あ、ああ。どっちのパスタも美味しそうだな」
「うん♪ とっても美味しそう!♡」
とうとうパスタが到着してしまった。
とにかく公共の場でのあーんは絶対的に避けるべきだ。
もし仮に俺がそんな場面を見てしまったら、それ以降料理が喉を通らなくなってしまう。
ましてや、月城とは付き合っていない。付き合っていない男女がする行為なのか?
考えれば考えるほどに、やはり、何としてでもさけなければ。
「……ゆーくん、険しい顔してどうしたの?」
あーんの話をどうやって自然に消滅させようか悩んでいた俺は、月城からの問いかけに思わず言葉が詰まってしまう。
「ん〜?? ゆーくん??」
「──っ!」
月城は真剣な表情で悩む俺を見つめ、不思議そうに顔をのぞきこんだ。危ない危ない。
月城の問いかけを無視なんてしたら何をしてくるかわかったもんじゃない。
あまりのめり込んで考え事をするとも良くないな。
「わ、悪い。何か言ったか?」
俺がそう言うと、月城は何を思ったのか、ハッとしたような表情を浮かべ、したり顔でニヤニヤと、はなし始めた。
「ふふふっ♡ 分かったよ、ゆーくん♪」
分かった? 意味が分からない。一体月城は何を分かったというのだろう。
そして月城は決め顔で話し始める。
「……ずばり! 私にあーんして欲しくて、恥ずかしがってるんでしょっっ!♡♡」
「っい、いや……」
より意味が分からない。言葉に詰まる=恥ずかしがる。一体どういう思考回路だ。
考えても仕方ないと思った俺は、ひとまず自分を落ち着かせるにコップの水を一気に飲み干した。こういう時こそ、一旦冷静になるのだ。
「ふふっ♡」
……月城は水を飲み干す俺を、微笑ましく見守るように、トロンとした目で優しく見つめた。
これは失態だ。月城にあーんの話を思い出させてしまった上に、早速その流れになりかねない状況をつくってしまった。
我ながら不覚。とは言ってもこの反応であれば元々やる気満々で覚えていただろうが。
そんなことを考えていると、月城は待ちきれなくなったように話し始める。
「んん〜っ♪ いつものゆーくんも可愛いけど、照れてるゆーくんも可愛いっ!♡」
「どう? 私があーんしてあげよっか??♡♡」
月城は再びトロンとした目で俺を見つめた。
「ちょっ、ちょっとまってくれ」
と、俺は咄嗟に、フォークで一口サイズにパスタを取り分けようとする月城をとめる。
……まずい。もう本格的に断れない状況になってしまった。
家や個室ならまだしも、俺たちの座る席は、うっかりでも誰かの目に入ってしまいそうな位置にある。
かといって俺はこのまま断ることも出来ない。
「はい、ゆーくん口あけてね」
月城はそういうと、一口サイズのパスタを差し出してきた。
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受験勉強してました
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