第39話 いざ勝負

「…………?」


「ふふ、もう! そういうことなら早く言ってよね!」


困惑する俺を他所に月城は心底嬉しそうに話し始めている。


どうやら月城は、俺があーんで食べさせて貰うことへの照れ隠しとして俺が提案をしたと思っているらしい。


月城の脳はよくもまあ、都合よく出来ているものだ。


「いや、どういう……」


「もー! ゆーくん照れちゃって! 私、ゆーくんの為ならいつだってしてあげるのにさっ♡」


こうなってしまったらもう、月城の誤解をとくことは出来ない。黙って受け入れておくのが最適解だ。


と、俺が導き出した最適解を駆使し、黙っていると、もともと月城は俺の喋らせるつもりがなったかのように、月城は喋る隙を与えずに話し続ける。



「……ゆーくん? 今度からは我慢しちゃだめだよ? して欲しいことがあったらすぐに言うんだよ〜?」



「…………」



「ゆーくんの願いならどんな願いでも私が叶えてあげるからっ♡」



「まっ! 今みたいに恥ずかしがるゆーくんもかっこいいんだけどねっ♡♡」



月城は何か言っているが、俺はしれっと呼び出し用のベルをおす。いわゆる時短テクニックだ。


すると、月城はベルを見ていたせいで、少し月城からよそ見をした俺の顔をのぞき込む。


「ねえ? 分かった?」


と、月城の顔が近くに来る。


……そうなると、やはり月城は可愛い。まじまじと見るとそれがよく分かる。


なんて考えていると、月城はさらに俺に顔を近付ける。


「……ねえ? 分かったの? 無視しないで?」


「あ、ああ、分かった、分かった」


俺は慌てて返事をする。危ない危ない。危うく大惨事になりかねない。


そして俺からの返事を確認し、ホッとした月城は嬉しそうに微笑む。


「う~!! どんどん私たちの距離が縮まっていくねっ♡ 私すごく嬉しいよ、ゆーくんっ!♡」



「──あ」


俺は店員が来たのを確認すると、料理を注文する。月城はまた一人でなにか言っているが、気にしないでおこう。


「ふふっ、とうとうゆーくんから誘ってもらえるようになったとはな〜っ。外食の提案をしてくれたのもゆーくんだし、私たちの愛は日に日に増すばかりだね〜っ! ……ってまさか、私に外食の提案をしたのもこの為の伏線っ!? ゆーくんまさか勉強の時からこの機会をずーっとうかがってたの?! ゆ、ゆ、ゆーくんっっ♡♡♡♡♡♡♡♡」


「ご注文をお伺いします」


「えーっと……オイルパスタとクリームパスタが一つずつ」


♢ ♢ ♢


それから注文を終えた俺たちは、料理が来るのを待っていた。


その間、月城から一方的に何かを言われ続けたが、その内容は三分の一ほどしか覚えていない。


そして俺が月城のマシンガントークにうんざりし始めた頃、とうとう注文の品が届いた。


「ご注文はこれで以上でしょうか?」


店員から二種類のパスタが置かれる。とうとう勝負のときだ。

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