第33話 触れないで……
「だから何言ってるの? 私とゆーくんは、愛し合ってるって言ってるじゃん」
「人の携帯を勝手に取るな」
人の携帯をかっ手に取った挙句、俺のメッセージアプリを開き友達の少なさを見せつけた月城は自慢げに語っている。
厳密に言えば家族はいるが、それ以外は半強制的に月城に消されたんだぞ。
「唯斗、お前の携帯の連絡先は大量の女の子で埋まってるんじゃなかったのか?」
月城とのやりとりの後、馬場は少し驚いた表情を見せ口を開いた。やはり馬場は噂を鵜呑みにしているのだろう。
入学当初から噂が浸透していくにつれ馬場から避けられている気がしていた。
……なんて考えていると、俺ではなく月城が口を開いた。
「私のゆーくんがそんなことするわけないでしょ? ゆーくんは私だけを愛してるんだもん」
少しの沈黙の後、ハッと表情を変えた馬場は『なるほど』と言わんばかりに話し始めた。
「……そうか、確かにそうだな。そういうことか」
「唯斗は毎晩女の家に泊まり込んでいるからな、わざわざメッセージでやり取りをする必要がないってことだな?」
「だから、俺は……」
毎晩、別々の家に泊まり込めるほど月城との同棲生活、いや、監禁生活は気楽なもんじゃない。
しかし、ここで同棲の話を出すのも気が引ける。
さて、どうやって回避しよう。と、俺が話を始めると月城がそれを遮るように話し始めた。
「ふふ、ざんねーん。私たち同棲してるんだ♪」
どうやら月城に喋らせてしまった俺が悪かったらしい。
すんなり同棲の話を出しやがった。とは言っても俺はそれを否定出来るわけでも、誤魔化せる訳でもない。
すると、馬場は疑い目で月城を見つめた。
「同棲?」
「あぁ〜っ……。私が同棲の話をもちかけた時、あのビックリした目。やっぱり嬉しかったのかな〜?♡」
戸惑う馬場を他所に月城は独りよがりに話をしている。よくよく聞いてみても、なぜビックリ=嬉しいに結びつくのか微塵も理解できない。
と、いうかやはりこの話題は触れるべきではないんだ。
「おい、月城。その件については、
「ごめんね、ゆーくん。でも大丈夫だよ、私が発信すればもっと沢山の人に私たちの愛を知ってもらえるからっ♪」
独りよがりになったしまったら最後、月城にもう話は通じない。
何が大丈夫なのかは分からないが、月城が発信すればもっと沢山の人に俺たちの関係がバレてしまうってのはあながち間違いでもない。
ま、俺はそのせいで月城に抵抗できないんだが。
「何言ってんだコイツら……っ。芽衣、芽衣は唯斗を振ったんだよな?! 浮気野郎だからだよな?!」
俺たちの全く出来ていない会話を聞いた馬場は、さらに困惑し、食い気味に芽衣へと話を吹っ掛ける。
しかし、芽衣は俯いたまま申し訳なさそうに口を開く。
「私も初めはそう思ってたのだけど……」
「……初めは……?」
芽衣がそう言うと、馬場はさらに困惑している様子だった。無理はない、あの芽衣が俺の噂を否定しているのだから。
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