第27話 ソファ

やはり、月城から出た言葉は俺の予想通りの言葉だ。しかし、俺たちは付き合っていない。


一緒に寝る、なんて行為は到底許されることではない。


「……悪いが月城、俺はソファで寝かせてもらう」


俺がそう言うと月城は心底不思議そうな顔をする。


言ってしまえば、寧ろ月城が不思議そうにしている理由が知りたいくらいだ。


「え? なんで?」


月城がそう言うと、俺は若干戸惑いながらも続けた。


「なんでって……」


添い寝は流石にダメだ。もう既に俺たちが同棲している、という事実がある時点でダメなのだが、添い寝は流石の俺も耐えきれない。


普通に考えて寝れるわけがないだろう。


しかし、月城は怯まずにこちらをせめつづける。


「ねえ、私のこと嫌いなの?」


月城がこういう発言をした時は慎重に言葉選びをするのが鉄則だ。


「そんなことは無い」


俺は焦りつつも、どうにか誤魔化す。ここで月城を刺激してしまえば本格的に寝ることは出来なくなるだろう。


すると、月城はぽんぽんとベッドを叩いて俺を誘導する。


「じゃあ、はやく寝よ?」


月城は死んだ魚のような目で俺を見つめる。


ひとまずここは冷静に月城の為を思った行為だと思わせることが大切だ。


俺は恐る恐る口を開く。


「ベッドで寝るのは大した問題ではない。ただ月城の眠りに邪魔をする事は出来ない。悪い」


俺がそう言うと、月城は再び疑問そうな表情を俺に向けてくる。一体何が疑問だと言うのだ。


「邪魔? ゆーくんが邪魔なわけないじゃん」


俺にとっては邪魔なのだが月城は邪魔じゃないらしい。ま、よく考えて見ればそれもそうだ。


わざわざ邪魔になるような相手を添い寝に誘うわけが無い。


しかし、俺は月城と一緒で寝れない夜を過ごすくらいなら、眠りは浅くとも、ソファでぐっすりといきたいものだ。


「や、やっぱり俺はソファで……」


俺がそう呟くと月城は俺を呆れたような表情で見つめ、ベッドを思い切り叩いた。


「なんで? この前ソファのせいで体が痛いって言ってたじゃん!」


俺はふと、自分の今までの発言を考えてみる。


……と、やはりいっていたかもしれない。


これは大失敗、今度からは、例え俺だけの問題だろうと、一つ一つの発言にも要注意していかなければ。


「だ、第一そのベッドは一人用だろ? 俺が入るスペースなんて」


俺は話を逸らすように添い寝の穴をつく。しかし、月城は食い気味に答える。


「あるよ」


月城はそう言うと再び自分の隣の空いたスペースをぽんぽんと叩く。


「ほら」


月城はそう言うがどう考えても、俺が入ってしまえば月城とほぼ密着状態になる程のスペースしか空いていない。


にも関わらず自信満々にベッドを叩く月城に俺は思わず指摘してしまう。


「そりゃ狭すぎるだろ!」


「えー? ……狭い方がいいじゃん!♡」

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