第26話 布団

「「ごちそうさまでした」」


「食った食った。月城、先に風呂入るか?」


「ううん、ゆーくんが入った後の残り湯を堪能したいから後で入る」


月城はさも当然のように、風呂へ入りたく無くなる発言をしてのけるな。


だが、一緒に入ることをせがんで来なかっただけマシだ。風呂へはいるとしよう。


「じゃあ」


本当であれば今日、自分の家から服を取ってくる予定だったのだが、月城に無理矢理止められたせいで、家から服をとることが出来きず引き続き月城の服を着ることとなってしまった。


これも月城の術中なのだろうか。


俺は風呂場へと向かって行った。



♢ ♢ ♢



俺はシャワーを浴びながら、今日のことを振り返っていた。


水族館、芽衣、ソフトクリーム、生姜焼き……。今日はボリューム満点の日だったな。


しかし、コレは今日に限ったことじゃない。


月城と再会してから日々のボリュームが何倍にも増している。


……さて、明日はどうなることやら。明日への不安が募るばかりだ。





一通り洗い終えた俺は湯船に浸かる。


が、先程の月城の薄気味悪い発言のせいで、湯船に浸かる気が失せてしまった。


……数分であがろう。



♢ ♢ ♢



それから俺は、風呂を上がり、若干渋りつつも月城の服を着、俺が上がったことを確認した月城は風呂へ入り、数十分後、風呂から上がった月城と、「ゆーくんの残り湯最高だったよー!」なんて会話を挟みつつ、テレビを見たり、アプリゲーをしたりであっという間に時は流れただいま就寝タイムだ。


「月城ー。電気消すぞー」


ベッドがないので仕方なくソファに寝転がっている俺は月城に呼びかける。


「ゆーくんちょっと待って!」


すると、月城は珍しく俺の消灯をとめた。トイレでもいくのだろうか。


「ん? どうした?」


俺がそう尋ねると月城は妙に張り切った声色でベッドから起き上がった。


「ふふ、今日はゆーくん私のベッドで寝ていいよっ!♡」


どうやら月城もとうとう俺への待遇について見直すことにしてくれたらしい。


というか、俺と暮らす予定があるのならベッドの二つくらい用意してくれたっていいじゃないか。


……なんて嘆くことしか出来ない俺に同情でもしてくれたのだろうか。しかし、なぜ突然なんだ?


「……急にどうした、いきなり」


俺もソファから立ち上がり月城方へ向くと月城、ベッドの布団をポンポンと叩き、俺へ合図を出していた。


「やっぱりさ、ゆーくんはソファじゃなくてフカフカのベッドで寝るべきだと思うの♪」


月城は張り切った様子で答える。


同情を誘った覚えはないのだが、いつの間にか俺が可哀想なことに気付いてくれたらしい。


まあ、それは嬉しいのだが、肝心の月城がソファで寝ることになってしまうでは無いか。


「そしたら月城がここで寝ることになるだろ?」


俺は訴えてみるが月城は表情を変えずに、いや、寧ろ微笑んですらいる。


「もー! ゆーくん優しい!♡ ……でも安心して私もここで寝るよ」


月城がここで寝る? 要するに俺と月城が一緒に寝る、ということか? 


だとしたら安心なんて微塵も出来ないのだが……。


俺は嫌な予感に薄々勘づきながらも、微かな可能性を信じ、一応問いかける。


「ど、どういうことだ?」


「端的に言えば、私がゆーくんと添い寝するってことだよぉ♡」

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