第23話 何とか
「ちょ、それは流石に……」
俺は月城にどうにか踏みとどまって貰おうとする。それもそうだ。
ハートマークゴリゴリの服で人前を歩くなんて、恥ずかしくてたまったもんじゃない。
それに第一、俺と月城はそういう関係でもない。一体月城は何を考えているのか。
もう少し、自覚を持ってほしいものだ。
すると、月城は甚だ疑問のような表情を浮かべる。
「え? なんで? ハートなんて、殆ど私とゆーくんみたいなものじゃん」
俺はすかさず月城にツッコミをいれる。
「いや、俺たちは別に付き合ってないが……」
当然ことながら俺たちは付き合ってなんかいない。
そもそもを言えば恥ずかしい、などそう言った話でもないのだ。俺たちは付き合っていないのだ。
しかし、月城はまだ疑問の表情を浮かべている。
「え? なにが?」
状況を把握していない月城に俺は思わずため息が零れる。
「なにが、って……」
俺がそう言うと月城は俺の言葉に被せるかのように喋りだした。
「だって、私たち付き合って──」
何かを言いかけてしまった月城だったが俺はそれを揉み消すように、再びシンプルデザインのペアルックを月城に突き出す。
俺が求めているペアルックというのは、直ぐにペアルックだと分かってしまうような分かりやすいものでなく、よくよく見たらペアルックじゃん。
的なちっぽけなデザインなのだ。
「お、月城、これなんかどうだ?」
俺がちっぽけなデザインの服を月城に見せると、月城は再び嫌そうな表情を浮かべ、ため息をついた。
「……もー。ゆーくん服選びのセンスない」
……確かに俺の服選びのセンスがないと言うのは否定出来ないが、月城はそれを言えるほどセンスを持っているのだろうか。
先程まで手に持っていた月城チョイスの服を見たら、それは一目瞭然だろう。
すると、月城は再び同じようなラブラブカップルが着るような服をチョイスする。
「ほら、これなんかいいじゃん?」
月城がそう言って俺に見せびらかすと、俺は月城の手から強引にふくをとりあげ元あった場所へ戻す。
「っておい! そんなのペアルックで選ぶ服じゃないだろ!」
本当に月城は学習しないやつだ。
こんな茶番劇を続けていてはそろそろ周りの目が怖いぞ。
俺がそうそうに月城から服を取り上げた矢先、なにやら後ろからぼやく声が聞こている。
「……えー? 私はいいと思うけどなー」
いじける月城を他所に俺は再びシンプルな服を選び抜く。
今回ばかりは譲れない。俺だってやる時はやる男だ。
「あのな……っと、これなんかいいだろ?」
「んー。やっぱりゆーくんセンスない……あ、こっち方がいいじゃん!」
「いやいや、何を言う。それならまだこっちの方が……」
♢ ♢ ♢
その後、茶番劇は数分、いや数十分、続くことになったのだが、全身全霊で粘った甲斐があり、なんとかシンプルなデザインで月城を納得させることが出来た。
月城は不服そうな顔をしていたのだが、また今度なんて言ってごまかした。
勿論、再び来るなんて愚行は働かない。
……帰り道は月城が駄々を捏ねたせいで、早速買った服来て帰る羽目になったのだがそこは目をつむることにした。
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今日は時間があまり取れず短めとなってます、申し訳ないです。
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