第20話 何故か再会
と、俺は恐る恐る振り返ると……やはりか。
俺は驚きながらも勇気を振り絞る。
「な、なぜ芽衣がここに……?」
俺がそう言うと芽衣は何故か安心したようにため息を漏らしていた。
「やっぱり……唯斗だよね」
芽衣は絶妙な顔をしてそう言う。
わざわざ芽衣は月城がいない時間を選んで話しかけてきたという事は、芽衣は既に月城のことを知っていたということか?
それなら何故。俺は極力気を使っていたはずだった
……いや、俺は月城に気を取られすぎて周りが見えていなかったのかもしれない。
「俺は唯斗だ。それがどうした」
俺は話を長引かせたくないのでキッパリとそう言う。
もしこの光景が月城に見られたりでもしたら……その先は考えたくない。
すると、芽衣はベンチを見つめ口を開く。
「今更なんだけどさ……と、まずはあそこのベンチに移動しましょ?」
芽衣はそう言ってベンチの方へ向かっていった。
……しかし、正直俺の頭の中は色々な情報がこんがらがってしまって、全く処理が追いついていないというのが現状だ。
何故、芽衣は月城のことを知っているのか、何故俺を振ったはずの芽衣がわざわざ月城が去った後の俺に話しかけてきたのか、そして芽衣がなぜここにいるのか。
俺がそんなことを考えていると携帯の通知がなった。
瞬時に察知し、なにか嫌な予感がしたが見ずに閉じてしまう方が嫌な結果になることも察知したので迷わず携帯を確認する。
『ねー、ゆーくん』
相手は勿論月城だ。
「どうした?」
俺はうっかり芽衣と話していることを悟られないように言葉を選びつつ送信を押す。
『私が居ないからって他の女と話すのはNGだよ』
すると、月城はさらに追撃メッセージが送られてくる。
『ゆーくんカッコイイからさ。……あ、店員でも女だったら勿論ダメだからね?』
月城の追撃はまだまだ終わらない。俺は月城のメッセージ攻撃にメッセージ送信するタイミングを失ってしまう。
『私はゆーくんの事信じてるけど。もしゆーくんが他の女と話してたことが分かったら……もう一度あの部屋を使うことになるかも知れないね』
『ゆーくん? どうしたの? 返信ないけど』
『なに? 女と会話中なの?』
俺は極力芽衣について言及されないよう心がけていたのだが、そのせいで口数減ってしまっていたみたいだ。
……いや、本当にそのせいなのかは分からないが。
と、俺は慌ててメッセージを打つ。
「いや、断じて違う。俺は自分から店員なんかに話しかけないし、ましてや話しかけらることもないと思うし。月城は安心して貰って大丈夫だ」
俺がそう送り返すと、月城からはハートの絵文字と『了解』のスタンプが送られてきた。
♢ ♢ ♢
結局なにも買わずにベンチへ座った俺たち。
今、月城がいないと言ってもいつ帰って来るのか分からない状況で話したくない。数分前に予告もされているしな。
俺は話し始める芽衣を遮るように口を開く。
「芽衣、悪いが今日の所は引き上げて──」
すると、芽衣はさらに俺の言葉に重ねて続けた。
「そうだよね。ごめん」
そう言うと芽衣は深呼吸をして続けた。
「私、唯斗のこと……誤解してたみたい」
誤解……? 芽衣が俺の誤解に気付いたというのか? だとしたら何故。やはり月城が関係しているのか?
しかし、色々な疑問が溢れ出てきても月城に念をおされているので俺は芽衣に話しかけることも返事をすることも出来ない。
「私が、幼馴染の私が、唯斗のことを一番知ってたはずなのに。学校に流された根も葉もない噂に惑わされてさ」
根も葉もない噂に……か。大好きな幼馴染に、芽衣に振られたあの日のこと……俺は鮮明に覚えている。
「私は唯斗に少しでも更生して欲しかったの。更生して欲しかったからあんな強い口調になっちゃって……」
そう言って芽衣は、自分の言葉に反応を示さない俺を確認すると悲しそうな顔をして、さらに続けた。
「私、頑張るからさ。唯斗を傷つけちゃったぶん頑張るからさ」
芽衣は俺の方を見つめ、顔を明るくさせた。
「またあの頃みたいに、いっぱい唯斗と話したい。いっぱい唯斗と──」
芽衣が言いかけると俺はそれを遮るように席を立つ。
「芽衣、ごめん。続きはまた今度にしてくれないか……」
これ以上、芽衣と一緒にいては月城が戻った時に誤解されかねない。これ以上は無理なのだ。時間的にも俺の気持ち的にも。
『悪い、俺もトイレ』
俺は月城にそう送りつけ、俺は芽衣から逃げるように男子トイレへと向かっていった。
「唯斗……」
残された芽衣はボソッと呟いた。
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もう少しで☆1000まで到達出来そうなので、もし良ければ☆お願いします。
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