第8話 ネットニュース

会場からは少し離れた待ち合わせ場所の駐車場で、俺は月城が来るのを待っていた。


駐車場と言っても車の邪魔にならないような場所で座って待っていることにした。


「……暇だ」


月城を待つ間、俺は特にすることがなく、これからのことを考えいた。



(俺は、これから一体どうなっちまうんだ……。取り敢えず今日は自分の家に帰りたい、なんて言っても月城は許可してくれないだろうしな……。今日は大人しく月城の家に泊めて貰うべきか……)



そして、俺はふと携帯を付けると、気になる記事が目に入った。



(ネットニュース……? こんなデカデカと貼られるなんて珍しい……どんな記事だ? ……えーっとなになに?)



『大人気アイドルMAGICのセンター月城月乃。「塩対応で有名な彼女がMAGICのライブで見知らぬ相手に向かってウインク!」友人か? 家族か? 将又、恋人か? 一体その相手とは……?』



俺の頭の中には嫌な予感で埋まってゆく。これって、まさか、だよな?


流石に情報が早すぎる、人気アイドルも困り者だ。月城はこの記事を知っているのか?


流石の月城もこんな記事を見つけたら顔面蒼白ものに違いない。


とらえようによってはファンが減ってもおかしくはない。




「ゆーくん!!」


遠くから声が聞こえたので、覗いてみると小走りでこちらへ向かってくる月城がみえた。


「お、月城」


「ごめんねー、ちょっと長引いちゃって」


俺の元へ着いた月城は少し息を切らしてそう言う。だがしかし、問題はそこではない。


やはり、話しておくべきだろうか。


「それは全然大丈夫なんだが」


「うんうん! そんなことよりさ! みてみて!」


俺が、記事についての話を切り出そうとすると、月城は嬉しげに携帯の画面を俺に突きつける。


そこにはやはり例の記事が映されていた。



『大人気アイドルMAGICのセンター月城月乃。「塩対応で有名な彼女がMAGICのライブで見知らぬ相手に向かってウインク!」友人か? 家族か? 将又、恋人か? 一体その相手とは……?』



「いやはや! 早くも私たちの滲み出る愛がネットニュースで取り上げられちゃったみたいだね♡♡」


月城も記事を見つけていたようで、予想とは裏腹に嬉しそうに微笑んでいる。いやはやではない。


月城が滲み出る愛なんて言っていることから、俺だけに向かったファンサービスだったことは明白になった。


「……や、やっぱりか」


予想はしていたが、絵に描いたような最悪の展開に俺は思わずため息が漏れる。


「あはは!! ゆーくんを思う気持ちが世間にも認められちゃった!♡♡」


しかし、当の月城は心底嬉しそうにしている。心配など微塵もしていない事だろう。


ファンに対しての誠意が足りて無さすぎやしないだろうか。


「軽すぎんだろ……」


「え? ゆーくんに対する愛は全然軽くないよ??」


「そ、そうか」


俺は、こんな記事が出回っているのに、もっと事態を重く見ろよ、軽すぎんだろ。のつもりだったのだが、月城は俺に対する愛について話しをし始めたので、そっとしておくことにした。


ファンの話を出した所で眼中に無いの一点張りだろうし。


「ここで話すのもなんだし、取り敢えず帰るか」


取り敢えず、引き上げることにした俺は、月城と駐車場を後にする。


この記事については帰ってからにでも言及しよう。外は危険だ。


「そうだね! 早めに帰ろ!」


と言って月城は、小走りに進み始めた。



♢ ♢ ♢



「え……? アレって唯斗、だよね、?」


学校の帰り道、寄り道をしていたところ、見知らぬ女と一緒に帰る唯斗を目撃してしまい、思わず言葉が漏れる。


笑い合いながら帰る二人、ひゅーひゅーと冷たく吹きやる風に芽依は焦燥に駆られていた。

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