第4話 密かな写真&一方その頃佐藤芽依
やはり、逃げるべきだったか。明らかに冗談ではない顔つきをしている。だが、一緒に住むのは流石にまずいだろう。
「ダメだ。俺は朝ご飯を食べ終わったら
「なんで? 私のこと嫌いなの?」
俺が断ると段々と月城の目には光がなくなっていき、緊迫した雰囲気が感じ取れた。
ここで嫌いなどと言ったら言わずもがなお仕置きタイムだろう。
「嫌いではないが」
「ならいいじゃん。住もうよ?」
月城はさらに念を押すように真顔で俺に圧をかけてくる。だが断る。
「俺には既に家があるんだ」
「私、ゆーくんの家も見てきたけど、ここの方が大きいし綺麗だよ?」
月城は両手を広げ部屋全体を見渡した。コイツはさらっと言っているが俺の家は既に確認済みらしい。
一体いつの間に……?
「いや、そういう問題じゃ」
「ゆーくん、こんな家一度は住んでみたいって言ってくれたじゃん。私嬉しかったんだよ? ゆーくんと一緒に住めると思って」
月城の追撃にさらに重圧がかかる。
しかし、月城の言い分も一理ある。何も知らなかった純粋な昨日の俺は疑いもせずさらっと放った一言
『僕も一度住んでみたいものですよ』
確かに言っていた。何やってんだ過去の俺……。
「ゆーくんの家ってアパートだよね? 今すぐ解約して」
「んなこと流石に無理だ」
月城の目には光が消え、この部屋にはただならぬ雰囲気が流れつつあった。
すると月城はガサゴソとポケット中を漁り、次第にポケットから携帯電話を取り出した。
「ふーん。私の言うことが聞けないんだったら、学校に犯されたって噂流すよ?」
「は、、そんなこと誰も信じる訳──ッ?! なんの写真だ?!」
月城が取り出した携帯電話のアルバムには、裸の俺と裸の月城が同じ布団で横たわっている写真が保存されていた。それに、あたかも俺が撮ったようなアングルで、月城は何食わぬ顔をしている。
「ゆーくんがぐっすり寝た後にとっちゃった!♡ でも安心して! 私は何にもしてないよ」
月城は俺に笑いかけてくるが目元は全く笑っていない。
「これを見てもまだ私と住むって言ってくれないのかな?」
すると直ぐに真顔に戻り再び圧をかけてくる。
月城の恐ろしい行動力に俺は二の句が出なかった。
こんなことは初めて、俺はひとまず自分を落ち着かせる為に軽く深呼吸をする。
しかし、そんなことはお構い無しに月城は言葉を重ねた。
「ねえ、なんとか言って」
月城の言葉には抑揚も弾みもなく、ただ真っ直ぐに俺を見つめ、さらに恐怖心を煽られる。
「……ねえ!!」
中々口を開かない俺を見かねた月城は大声を出し、テーブルを叩いた。
この緊迫した雰囲気の中、俺は月城の提案を断ることが出来ず流されるがままに
「わ、分かった。住む、一緒に住むよ」
月城と一緒に住むことを決意してしまった。もしも断っていたら、と考えると末恐ろしいので、やはり、これで正解だったのかもしれない。
「ええ! ありがとう♡ ゆーくん大好きい♡♡」
同棲を認めると、再び月城の目には光が戻り、俺は取り敢えず目玉焼きを口に運ぶ。
月城は俺を見つめている。
今、先のことを考えるのは辞めておこう、この瞬間、心からそう思った。
──こうして俺たちの地獄の
♢ ♢ ♢
一方その頃、唯斗が通う学校では、もう既に噂は広まり芽依の席には人集りが出来ていた。
「今日、唯斗休みらしいぜ?」
芽依の机を取り囲み一人の男子が話を切り出す。
「はは!! まあ無理はねえよな。芽依さんに告って玉砕したらしいからな!」
「あいつも馬鹿だよな!」
「芽依さん! いつも一緒に居たのにあいつ振っちゃっていいんすか?」
男Aがそう言うと芽依は「はぁ」と、ため息ひとつはき、話を続けた。
「あの人は浮気しているクズ男。承諾する理由がない」
「芽依さんも辛辣だなあ」
これには男Aも苦笑しているようだ。
「でもまあアイツは事実、浮気野郎だからな」
──キーンコーンカーンコーン
すると、チャイムの音が学校中に鳴り響き、担任がホームルームを開始すべく教室へ入ってきた。
「──おい。お前ら席につけ」
芽依の机を取り囲こんでいた男たちは、足早にその場を去っていった。
「だってあの人は……」
誰もいなくなった、寂しい机、芽依は一人、考え事をしていた。
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