第9話:没落の気配(追放側の話②)
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「私たちは本日でガーデニー家を辞めさせて頂きます!旦那様、これでは先代や先々代の旦那様に顔向けできませんぞ!」
その日の夜、あのおじいちゃん執事と何人かの召使いがお義父様になんか言ってた。辞めるのは勝手だけど、次のお仕事はアテがあるのかしらね?
「別に辞めたきゃ構わん、勝手に辞めろ。しかし、お前は最後まで主人に向かって態度がでかいな!わしはお前たちの勤め先など探してやらんぞ!」
アララ、怒られちゃった。辞めるなら黙って辞めればいいのにね。
次の日、朝起きて食堂に向かうと、何も用意されてなかった。
――ちょっと、なんでご飯ができてないのよ。
お義父様とお母様もテーブルの横であぜんとしている。
「おい!これはどういうことなんだ!」
お義父様が家の中に向かって怒鳴った。しかし、誰も出てこない。
「おい!誰かいないのか!」
「何で私たちの食事ができてないの!」
お義父様とお母様が叫んでいると、ようやく執事が出てきた。
「おはようございます、旦那様、奥様。どうかされましたか?」
――はあ?見てわかんないの!?
「お前はバカか?食事ができてないじゃないか」
「はい、料理人たちは皆辞めましたから」
――えっ?
これにはさすがにお義父様とお母様も驚いた。
「どういうことだ。なに勝手に辞めてるんだ」
「昨晩旦那様が、辞めたきゃ勝手に辞めろとおっしゃったじゃありませんか」
――そういえば、お義父様はそんなこと言っていた。でも、あれはその場にいた人たちに言っただけでしょ。
「ぐっ……。たしかに言ったが、そんなのそこにいた奴に対してだとわかるだろ!そもそも、そんなことは契約違反だ。雇用契約書では一年間の契約になってるはずだぞ。まだ一年も経ってないじゃないか」
それを聞くと、執事がはぁ、とため息をついた。
――なにこいつ!
「ですから、雇用契約書にも主人の許可を得たら、すぐに辞めてよいと書いてあるのです」
差し出してきた雇用契約書を見ると、たしかに下の方に書いてある。しかも、サインしたのはお義父様だ。
「……じゃあ、何でお前は残っているんだ」
「聖ガーデニー教会の後片付けです。ロミリアお嬢様が大切にされていた場所ですから、最後にきれいにしておきたかったのです。それでは片付けも終わりましたので、私もこれにて失礼いたします。さようなら」
そういうと、執事はさっさと家から出てしまった。それから、私たちは誰か残っていないか家中を探したけど誰もいない。
「クソっ、あの召使いども!勝手なことしやがって!」
「エドワール、お腹空いたわ。まずは何か食べましょう」
とりあえず、私たちは食糧庫にあった食べ物で食事を済ませた。
「しょうがない、召使いどもは求人を出せば、またすぐに集まるだろう」
――ちょっと待って。それまでは、全部自分たちでやらなきゃいけないってこと?
「まずは手紙でも整理するか、ダーリー取ってきてくれ」
――えー、手紙くらい自分で取ってきてよ。
わざわざ門まで行くと、手紙は両手で抱えきれないくらいある。
――うそ!手紙ってこんなにあるの?
昨日までは召使いたちがいたから、一日でこれくらい来るということだ。お義父様もお母様も手伝いに来ないから、一人で持っていった。
「ふぅ、持ってきたわ」
ドサッとテーブルの上に置く。
「……ずいぶん多いのね」
私もお義母様も手紙なんて読んだことがない。
「めんどうだが、手分けしてやろう」
三人で手紙を整理していく。ガーデニー家は歴史が古いから、色んな資産を管理してた。でも、お義父様もお母様も家の仕事をしているところを見たことがない。
「デラベラ、これは何の手紙だ?」
「さぁ、私が知ってるわけないじゃないの」
チラッと覗いてみたら、領地の税率?の計算式みたいなものが書いてあった。お義父様もよくわからなそうだ。私は難しいことを考えるのは嫌いだから、請求書の整理とかしていた。
――こっちは私のドレスの請求書、こっちは……よくわかんない手紙。あっ、お母様また新しい宝石買ってる!自分ばっかりずるいっ!
仕分け終わると、ほとんどが資産管理だとか難しい内容の手紙だった。
「全く召使いがいないと不便でしょうがないわね。エドワール、早く雇ってちょうだいよ」
「あぁ、そうなんだが。しかし、わしはこんな書類を読んだことはないぞ。召使いどもに領地の管理などはさせていなかったはずだ」
――あれ?っということは、今まで誰がこんなにたくさんの手紙の山を片付けてたの?
三人でぽかんと顔を見合わせた。
……お義姉様じゃん。
*****
外国に行っていた父上と母上が、予定より早く帰ってくるそうだ。
――ちっ、はえーよ。
父上も母上も口うるさいので嫌いだ。ロミリアとの婚約もあの二人が決めた。思慮深い女性だから、未熟なお前には必要な人だとか言っていた。ふざけんな。そういえば、ロミリアと婚約破棄したことは、父上と母上にまだ言ってなかったな。
――……まぁ別に大丈夫だろ。よその家の女と婚約したわけじゃねえし。
「あの……ルドウェン様」
――ったく、またあの迷惑なパトリーが書類を持ってきた。
「なんだ?」
「今週のダイヤモンドの採掘量なのですが……」
おっと、これは大事な話だな。我が国は世界有数のダイヤの産地として有名だ。
「見せろ」
書類をざっと見ると、採掘はおおむね良好です、みたいな内容だった。
「よし、今週もよく採れたみたいだな」
俺は頭が良いので、ざっと見るだけで理解できる。ドサッと書類を机の上へ適当に置いた。
「あの……ルドウェン様」
パトリーはもじもじしてる。
「あ?」
「あ、あの、それは大事な書類ですので金庫にしまわれた方が……。もし侵入者などに盗まれてしまったら、大変なことになってしまいます」
――このやろう!また俺に歯向かってきやがった!
俺はめちゃくちゃ頭にきた。
「ここは王宮なんだから、誰かが入り込めるわけねえんだよ!それに仮に侵入できでも、無理やり侵入してくるようなやつは警戒魔法で焼かれるのは知ってんだろ!もういい!お前はクビだ!さっさと出ていけ!」
「ひいいいい!申し訳ございませんでした!」
パトリーは大慌てで出ていく。はぁ、なんで俺の周りにはバカしかいないんだよ。
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