第二章〜東西境界線編〜[第一話]オリーブを贈る旅

『死なないでおくれよ、オリーブ』

アイリスの歳が二十四になる前日、オリーブの寿命が尽きた。

その夜、アイリスはオリーブのことを思い出すたびに泣き、やがて泣き疲れて眠った。

アイリスは昼間に起き、オリーブに触れる。

オリーブの体はすっかりと硬くなってしまっている。

いつもは町へと向かい、読み聞かせをする時間なのだが、アイリスは気が向かず現実逃避するようにもう一度眠りにつく。

しかし、アイリスは頭にオリーブがよぎり、眠りにつくことができない。

オリーブとの楽しかった出来事を考えているうちにアイリスはヘブンズゲートの話を思い出す。

ヘブンズゲートとは、グラン王国から南にある東西の国を経由し、さらに南の海(死海)を超えたところにある大きな滝のことである。天国への門とも言われており、亡くなったものを棺に入れ、船で滝の前まで行き、滝の中に流し込むことで死者を天国に送るという東西の国独自の風習だ。

ちなみに死海の名前の由来は、漁師達がヘブンズゲートの前で漁をしていると、どこからともなくぼんやりとした人の声が聞こえ、亡霊が死を誘っているのではないかという言い伝えから名付けられたのだ。

ポストマンだった頃のアイリスはこの手の言い伝えを全くといっていいほど信じなかったが、『エリス』での出来事を体験しているので、天国があってもおかしくないのではと半信半疑になっている。

アイリスは悩んだ末、友人のために自分に出来ることはこれしかないと考え、身仕度をし、東西の国へと旅に出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

アイリスと幻の国々 永山 舞人 @maitokidoki721

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ