[六話]消えた国
アイリスは目を開けると、地形の凹んだ草原のど真ん中に横たわっていた。
緑豊かな土地である。先程までの真っ白な世界がまるで嘘かのようだ。城の姿はもうない。アイリスの背後には狼に追いかけられたであろう森があるが、鳥のさえずりが聞こえてくるだけだ。
そして、アイリスの近くにはグラン王国の王様や兵士、市民が横たわっている。
アイリスの左腕はすっかり元通りになっており、寝ているオリーブを両手で抱え込みゆっくりとその場を去る。
先程まであったユミルのような大きな門も無くなっていたが、やせっぽちの兵士とふとっちょの兵士も道のど真ん中に横たわっていた。
アイリスとオリーブはやっとのことで自分の家に帰ることができた。
そのままアイリスはベットに倒れ込み一日中寝ていたそうだ。
次の日、オリーブの『ワンワンッ』という声で目が覚めた。
オリーブにご飯をあげ、何事もなかったかのように配達へと向かった。
新聞にはこう記載されていた。
雪の国『エリス』が突如、消えたと。
王様が目を覚ますと、地形の凹んだクレーターに兵士達や選ばれた九人の市民が横たわっており、町や城が無くなっていたと。さらには『エリス』へと続く門も無くなっていたとのこと。このニュースはグラン王国中に広まった。
消えた一人の市民が『エリス』を消しただの、町は雪で出来ており溶けてしまっただの、本当はそんな国は存在しなかったのではないか、としばらくの間、噂話が絶えることはなかった。
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