[四話]エリスの王女
『おーい!誰かいないのかぁ!』
アイリスは助けを求めながら、唯一の灯りがある城へと向かっていく。
城の前には大きな橋があり、大きな門の前に立つと招いているかのように一人でに開いた。
おそるおそる中に入ると、目の前には大きな階段がある。階段を登り、赤い絨毯の敷かれた道を進むと美しく、煌びやかな赤い服を着た白髪の女性が王座に掛けている。
『あ、あの!不躾かも知れませんが、この生き物が死にかかっているのです!助けてはもらえませんか!』アイリスは必死に問いかける。
すると、その女性は『まぁ、汚らしいうさぎね!早く捨てて来なさい。』とアイリスを叱りつける。しかし、ビクターは食い下がらない。『この子は今、必死に生きようと頑張っているのです!お願いですから、お助け下さいませんか!』必死に懇願するが、その女性は『嫌よ。』と一言だけ添える。
アイリスは問う。『どうして、助けてくれないのですか?』
女性は答える。『どうしてって?私を誰だと思っているの?この国の次期女王カモミールよ。どうして私がそんな下等生物を助けなければならないの、早くそのちんけな犬と汚らしいうさぎを森に帰して下さる?』
アイリスは激怒した。
『呼んだのはそっちじゃないか!だから、僕ははるばるここまで来たんだ!大体、なんなんだこの町は!人影がまるで無いじゃないか!』
王女はアイリスを睨みつけた。
『あなたに突如、この国が滅んだ苦しみが分かるかしら?』
アイリスは状況を飲み込むことができない。
『この国が滅んだ…?』
王女は怒鳴る。
『そうよ!本当は私がこの国の次期女王になるはずだったのよ!でも、突如この国は隕石によって滅んだ……』
アイリスは何を言っているのか分からず、この城に居ても無意味だと思い、すぐさま外に出ようとし、王女に背を向ける。すると、王女は『どこへ、行くの?』と問いかける。
アイリスは『あなたはこのうさぎという生き物を助けては下さらないのでしょう?ですから、他を当たります。もうこの国には二度と来ませんから。』と答える。しかし、女王はどす黒い声で『帰さない。お前にもこの国の国民になってもらうのだから。』と言う。アイリスは後ろから悍ましい雰囲気がするので、恐る恐る後ろを振り返るとそこに人の姿はなく、王女は真っ赤な目をした白い虎に変貌していた。
オリーブは『ワンワンッ!!バウゥゥゥ!!』と威嚇する。しかし、白い虎が『グルァアアアアアアアア!!!』と城中に響き渡るほどの大きな雄叫びをあげると、オリーブは腰を抜かしてしまう。
アイリスはオリーブと真っ赤なうさぎを抱え、走り出す。しかし、虎の足の速さに勝てるわけもなく、橋の上で虎にうさぎごと左手を食いちぎられてしまう。痛みでどうにかなりそうなアイリスだったが、オリーブのことはしっかりと抱えたまま橋の下の用水路に落ちてしまった。
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