[二話]ユミルの門

しばらく、道を歩くと原初の巨人ユミルのように大きな門がそびえたっており、門の向こう側は見ることができない。この門は雪の国『エリス』へと続く唯一の道である。通常であれば、人が立ち入ることを禁じている。

そびえ立つ門の前にはぽっちゃりとした兵士とやせっぽちの兵士がいる。

アイリスはおそるおそる門の前へ行くと、ぽっちゃりとした兵士がビクターに睨みを利かせる。

兵士は問う。『何の用だ。』

アイリスは黙って招待状を見せた。

すると、やせっぽちの兵士が『お前、雪は初めてか。』と問う。

アイリスは黙ってうなずく。

ぽっちゃりとした兵士は『その格好では死んでしまうぞ、これを持っていけ。』といい、兵士の服を差し出す。

アイリスはボソッと『いらないよ。』というが、やせっぽちの兵士は『無いよりマシだ。それに普通のサイズだから着れるのは君しかいないんだ。』と言うので、断るのも申し訳なく上から兵士の服を着た。

ぽっちゃりとした兵士は『犬は置いていけ。俺達が預かってやる。』と言うが、アイリスは首を大きく横に振る。やせっぽちの兵士は『でも、死んでしまうよ。』と言う。しかし、アイリスは兵士達が優しいふりをして、オリーブを連れ去ろうとしているのだと思い、『オリーブは僕の友達なんだ、お前らに預けられるものか。』と兵士を睨みつけ、着ていた兵士の服を床に叩きつける。

ぽっちゃりとした兵士は『知らないからな。』とアイリスを睨み返す。

やせっぽちの兵士は『はぁ…』とため息を吐き、呆れた様子を見せる。

兵士達は門に敬礼をしながら、『闇夜に烏、雪に鷺』という呪文を唱えると同時に大地が揺れ、門が大きく開き始めた。

門が開き出すと冷たい風が吹いてきた。おそるおそる目を開け、門の中に入ると辺り一面は真っ白な世界で広がっていた。

兵士達『それじゃあ、お気をつけて。』

振り返ると門は無くなっていた。

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