アイリスと幻の国々

永山 舞人

第一章〜雪の国編〜[一話]雪の国からの招待状

彼の名は『アイリス』歳は十四のしがないポストマンだ。

町中を回ってポストに手紙を入れる仕事だ。

他人と馴れ合うのはあまり得意でないし、好きでもないアイリスにとっては天職といえる。

配達を終え、帰宅すると一通の手紙が届いていた。

アイリスにとって初めての手紙だった。彼には唯一の友達『オリーブ』がいるが、彼は手紙を書くことができない。なぜなら、犬だからだ。

この手紙の差出人はこの国のはるか北にある雪の国『エリス』の王女からであった。

驚きながらも、おそるおそる中を開けると退位式の招待状が届いていた。

この国『グラン』は『エリス』と深い友好関係にあるため、退位式には何としても参加しなければならない。

では、なぜしがないポストマンが退位式に呼ばれたかって?

それは国民の名簿の中からくじで参加する10人の候補者が選ばれたからだ。

一般市民は『エリス』がどんな国か知らないし、雪というのが何かも知らない。

だからこそ『エリス』の良さを知って欲しいそうだ。

雪の国に行けることは国民として名誉である。行かないという選択肢はないのである。

アイリスは確信した。この手紙は間違いなく、誠意に満ちていると。

アイリスはすぐに身支度を整え、オリーブを連れ雪の国へと歩いて向かった。

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