これが黒川弥美

 ということで、俺と弥美さんは教室を抜け出して廊下を歩き昇降口を目指す。


 放課後になり三十分が経っており廊下には人がいなかった。

 みんな、部活やとっくに帰ってしまっているようだ。

 それでも、テスト週間になるとみんな教室で勉強をするためこういう何もない日に限るが。


 さてと……せっかく二人っきりになったのだ。

 

 まずは弥美さんを攻略するとしよう。


「あのさ、弥美さん?」


 そう声をかけたわけだが……弥美さんはヨダレを垂らしながら。


「ああ……子宮がキュンとします……ぼ、ボクを選んだってことでいいですか?」


 なんでこの人、こんなに同人誌みてぇなこと言うんだよ!!

 あれ、もしかしてだけど俺は難易度が一番高いルートを選んでしまった系か!?

 いや……こいつを選んだ時点で大体わかってたけどよ!!


「あのな……弥美さん? あれは全部間違いなんだよ」


 弥美さんは笑顔で。


「ふふふ、冗談は大丈夫ですよ。やはり、ボクとヒーラギは運命のようですね!」


 ああ、誰か助けてくれー。

 この変態から俺を救ってくれー。


「いや、だから。違うんだよ……俺は別に……弥美さん以外に好きな人がいるんだ! だから……わかってくれ。あれは弥美さんのために送ったやつではないんだ!」


 すると、弥美さんはガーンという効果音が似合うように口を大きく開けて灰のようになる。


 ここでやっと彼女はあれが誤解だということがわかったようだ。


 これで誤解が解けて欲しいものだが……さすがにそんなに人生うまく行くものではないことぐらい知っている。

 ここはご都合主義な世界なんかではない。

 しっかり、現実を見るとしよう。


「嘘ですね……嘘ですね……」と俺には聞こえない声で呟く弥美さん。


 そんな弥美さんに俺は耳を近づけ。


「ん?」


 次の瞬間、弥美さんは幻覚だが血のように赤く見えてしまう涙を流しながら、俺に飛びかかる弥美さん。


「う、嘘だよねえええええええええ──っ!!」

「ひいいいい──!!」


 そのまま抱きつきながら、俺を下から見る弥美さん。


 彼女の顔は失礼だが完全にこの世のモノとは思えない顔だった。

 なんというか……少しほどだが化粧が涙で取れ、いや、別にそんなのは気にしないほどだ。

 ただ幻覚で血にしか見えないその涙が完全にホラーだ。


 って、そんなこと思っている場合じゃない。


 ここは廊下なのだ、人に見られる可能性が……。


「お、お前……離れろっ」


 辺りを見渡して今度は俺がガーンという効果音が似合うように口を大きく開けて灰のようになる。


「ねえ、なんでよー、そんなことより、さっきのは嘘でしょ? 本当はボクだよね? はぁ〜、早くヒーラギと子供作りたいなぁ〜……って、ヒーラギ? あれ? ヒーラギ?」

「あーなんか、ごめんなさい。ほら、隼人くん私はすぐに行くから……本当にごめんなさいっ!!」と頭を下げる……。


 ツンツンと俺を触る弥美さん。


 な、な、な、なんで……こんなに俺の人生はこんなにも運がないんだ!?


「し、翔子……さん?」


 そこには先生からプリントを持っていくように頼まれたのか山ほどのプリントを持っている翔子さんが……。


「だ、誰かな? この人は?」


 くそ、こんなところで翔子さんと出くわすとは!!


 俺は急いで弥美さんを脇で挟む。


「こ、ここでするの……? ぼ、ぼ、ボクはいいけどさ……ふへへへ」


 もう、こいつの言葉にいちいち突っ込んでいる場合ではない。

 好きに妄想してろ!


 そのまま、弥美さんと百八十度回転して耳元で。


「そ、そんなに吐息を……ぬ、濡れるよ……」

「今から、弥美さんはしゃべるのをやめてもらっていいか?」

「えええ、なんで?」

「そんなの……」


 くそ、絶対にこっちを変な目で見ているぞ翔子さん。

 こうなったら、単刀直入にいうべきか?


「俺が好きな人はそこにいる翔子さんなんだ……だから……」

「何?」と低いトーンで言う弥美さん。


 あ、これは……選択肢を……。


 次の瞬間、弥美さんは俺の腕を離し俺のほっぺを両手で掴み、ゴキっと強制的に百八十度回転させる。


 い、いったあああ。


 そして、翔子さんと目が合うと同時に。


 ムニっと唇に柔らかい何かを感じた。


 それは暖かく、マシュマロのように柔らかかった。

 あとは、とてもいい匂いがした。


「え……」と俺は唇を触る。


 弥美さんは俺を見るとヨダレを袖で拭き、ニヤリと笑う。


「あ〜ごめんね、な、なんか見ちゃいけないのを見ちゃったわね……」と申し訳なさそうに俺たちの横を通り過ぎていく翔子さん。


 選択肢をミスったやつだあああ!!


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