修羅場
さて、ここから俺はどうすれば逃げることができるのか?
ただそれだけが脳内を駆け巡っている。
てかよ、そもそもおかしくないか?
なんでグループで言ったのにこいつらはみんな、自分が言われたと思ってるのだろうか。
俺は困った表情をしながら。
「あ、あのさ……言ったはずなんだが俺は……あれは全部間違いなんだ。俺はさ本当は別に好きな人がいてさ……その人に告白するはずだったんだが間違えてグループにって感じでさ?」
これが通じる相手ではないことは大体わかっている。
だが、これ以外に方法なんてないのだ。
頼む、届いてくれ、これがただの間違いだということを信じてくれ!
でなければ、俺が翔子さんとの関係が!
俺はとにかくそれだけをお願いする。
だがしかし、人生はそんなに上手く行くものではない。
「そんな言い訳はいいわ、とにかく早く誰かのか選んでちょうだい」
「あたしに決まってますよね! あたしを選べばこのおっぱいを自由にできるんでしよ?」
「玲は……そんなにありませんけど、玲でいいなら……べ、別にいいです!」
「こいつら、ぜ、全員殺せば隼人は私のも、ふへへへ」
わ〜お、一人だけサイコパス野郎が混じってて背中がゾクゾクするんだが。
つーか。
俺は席を立ち上がり、バンっと机を叩き音を立てる。
その音にピクリとする四人。
「あのな……俺ってそんなに性欲強そうに見えるか? なんで、俺はお前たちをそういう目で見ていることになってるんだ!? ──仮に好きだったとしても俺はそんないやらしい目で見ないから安心しろ!」
全く、どこから俺がそんな性欲やろうに見選んだか。
え、見えないよね?
ね!?
誤解もいいところだ。
俺のせいだけどさ。
すると、真維さんが横髪をくるくるといじりながら可愛いアヒル口で。
「な、なら、柊くんは私のことを純粋に好きという気持ちで見ているってこと?」
だーかーら、あれは間違えで真維さんのことが好きだとかそういうのはないのに!!
「ず、ずるい! あたしが隼人の一番なんだからっ! ほら、お乳の時間ですよ〜♪」
くそ、少しおぎゃりたいと思ってしまった自分を殴りたい!
だめだ、抑えろ……俺は翔子さんと関係が作りたいんだ!!
「そ、そういうのはダメ! 玲は……純粋な柊さんとの恋愛がしたいです!」
頬を赤く染めて言う玲さんはとても可愛らしい。
俺の中ではこんな中では完全に玲さん一択だ。
でも、ごめん、俺には翔子さんがいるんだ!
最低だが、もし翔子さんと振られた時を考えて玲さんは取っておいてもいいかもしれない。
いや、最低だな。
今のは撤回だ。
お互いのセリフを聞いた後、睨み合う三人。
「ぐぬぬぬ、玲が一番です!」
「いいえ、私よ!」
「どこからみなさんはそんな自信が? あたしに決まってるでしょ!!」
「そんな身体、柊さんは嫌いです! 玲みたいな普通の身体が柊さんは好きです!」
「わ、私のも普通の身体よ!」
ぐぬぬぬっと見つめ合う三人。
幻覚だがばちばちと何か見えてしまうほどに三人は本気だ。
や、やめろ〜! 俺のために争うのは〜!!
そんなことを話に割り込んで言いたいが、この……完全に修羅場状態で言えるものではない。
何より一番怖いのは──。
俺は弥美さんの方をチラリと見る。
弥美さんは両指をヨダレを垂らしながら舐め、息をはぁはぁと荒くし、完全にアヘ顔とやらをしながら。
「はぁはぁ……これで全員が死ねばヒーラギは完全にボクのものだ……」
こいつだけ、レベルが違う!!
この状況でそんなことを考えるか!?
なんでこいつの問題解決は人を殺すなんだ!?
「はぁはぁ……興奮で濡れてきた……」
やめろ、それ以上は言うな!!
そういうのは心の中だけにしておけ!
弥美さん……あんた、こうやって関わってみて分かったけどよ、あんたのこと好きな人は沢山いるわけだ……失礼だが、そいつらには忠告させてもらいたい。
『あいつだけはやめた方がいい』と──。
「ねえ、ヒーラギ?」
「は、はい!!」
やべ、怖すぎてつい反射的に反応してしまった。
弥美さんは指についたヨダレを伸ばし出す。
はぁはぁととても息が荒い。
……うん、これはもしかしたら一番こん中でエロいかもしれん。
一番は個人的な偏見だが咲美さんだと思っていた。
それが更新されてしまったわけだ。
「もう、我慢できない……あいつらはこういう状況だし……ボクと今のうちにこの場を去ろう」
お、それは名案だ。
この修羅場状態、三人は完全に俺のことが見えていない。
なら、このうちに逃げるのが正解だ……いや、弥美さんと二人は不正解かもしれない……が、今の弥美さんは怖いとかそういうのよりエロいが勝っている。
だ、大丈夫だろ。
「そ、そうだな……」
この時の俺はそんな軽い考えをしていたが……このあと、あんなことが起こるなんて考えてすらいなかった。
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