第18話

 深い深い森の中。

 神樹と言われる太く大きな木にの近く、アルピスの山から流れてくる清らかな川のほとり。

 太陽の日当たりがいい場所にぽつんと一軒の立派なおうちがありました。


「結婚式の日は面白かったねぇ」


 その家の中で、椅子に座りながら、外を見るウィルと私。

 ウィルがふと思い出したように私に話しかけてきました。


「急ね、ウィル。でも、えぇ、本当に。あの時のみんなの変わり身の早さにはびっくりしたわ」


 私も私の人生で5本の指に入る様な素晴らしかったできごとの1つ、結婚式を思い出す。みんながみんな自分ができることで私たちの角出を楽しみながらも楽しませてくれた。


「まさか、裁判官が神父様もできるってのはびっくりしたかな」


「あぁ、そうね」


 私たちは裁判と同じように結婚式でも彼の前で真実の言葉を口にした。裁判官は裁判では厳しい顔だったけれど、結婚式ではとても穏やかで慈愛に満ちた顔で私たちを見守ってくれた。


「でも、あの後すぐに死んじゃったから悲しかったわ」


「そうだね・・・。まぁ、幸せな人生だったからこそ、延命魔法やミーシャの奇跡を使わなかったんだろうね」


 裁判官としても神父としても最高の仕事ができたから思い残すことはないと言って、天へと召されて行った。もしかしたら、煉獄の炎に一度は身を入れるかもしれないけれど、彼ならすぐに天国に行けるはずだ。そんなのも魔法で聞こうかウィルは私に聞いてきたけれど、そんな無粋なことはできないと断った。


「でも、リリスとも歩み寄れて良かったね。てか、歩み寄らなきゃ嫌がらせしたかも」


「もー、冗談でも嫌がらせとかやめて」


「いやいや、ミーシャに悪さするやつを許せないに決まってるって何度も言ってるだろ?」


「そーでーすねー」


 結婚してから数年経つけれど、ウィルは私を大事にしてくれる。里帰りのような形で地元に帰ったときに流れ者の山賊に襲われそうになったときもすぐに対峙してくれたので、本当に頼りがいがある。


 そして、ウィルが話をした様にリリスも謝りはしなかったものの「おめでと。幸せになりなさいよ」と上から言ってきた。お灸を据えられたように、きつい地獄を見たリリスは現世でかなり徳を積まないとあの地獄が待っている。あの距離であんなに燃えると言うことは、少し同情してしまう。


「あとは、あの日から悪さをする子どもには、煉獄の炎でやかれちまうよ、って言われるようになったらしいね」


「ふふっ、でも、みんな自分なら大丈夫って返事をするまでがテンプレートでしょ」


 あの国の子どもたちは本当にいい子たちばかりだ。大人も素直になりつつあるし、きっとどんどん良くなっていくはずだ。


「あぁ、さすがはエンブレスの聖女様・・・いや、慈愛に満ち溢れた聖母様かな」


 ウィルは私の愛に溢れたお腹を温かい眼差しで眺めた。

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