第15話

「これからよろしくね、魔法使いさん・・・いいえ、ウィル」


 私は背伸びをしてウィルの頬にキスをした。

 ドッキリは大成功だったようで、ウィルは顔を真っ赤にして、固まっている。


 だって、自分の人生だもの。

 誰かに質問されてから、決めるんじゃなくて、自分から選んでいきたい。


「本当に・・・いいのかい?」


 我に戻ったウィルがそんな自信なさげに言う。


「らしくないじゃない、ウィル」


「だって・・・、ボクって結構マイペースだろ?」


「いいえ、大分マイペースよ」


「うううっ」


 凹むウィル。


「ふふふっ」


 そんなウィルがやっぱりかわいい。

 昔と違って、ちょっとだけ気持ちの方も背伸びしてみた。だって、これから一緒に愛し合う者として暮らしていくなら、今までの師弟関係は脱却しなければならない。無理して背伸びをしたら、ちょっと小生意気になってしまったけれど、ウィルはそんな私もすぐに受け入れてくれた。歳の差はよくわからないけれど、きっとこれから一緒に生きても気にならないに違いない。


「じゃあ、お父様とお母様に挨拶して」


「ああ」


 私たちは手を繋いで、お父様とお母様のところに向かった。

 当然その隣にはアレクとリリスがいるのもわかって―――


「ミーシャのお父さん、お母さん」


 ウィルが少しだけ緊張しながら言う。

 一応貴族の家柄だから、お父様、お母様って呼ぶ方がいいかもしれないと思いつつ、そんな呼び方の方が暖かい家族になれそうな気がしたから、私はニコニコしながら聞いていた。


「駄目じゃないですか、ミーシャが処刑されそうになったら助けないと」


(えっ、まさかのダメ出しから!?)


 私があたふたしながら、お父様たちの顔を見ると、二人とも申し訳なさそうな顔をしている。


(ちょっと、ウィルっ、何を言ってるのよっ!!)


 私は心の中で叫んだ。


「ボクってこんな感じで、人の常識すぐに破っちゃう感じなんですけど、お二人が育てたからこそこんなにも素敵なミーシャをボクは絶対に幸せにするので、ミーシャさんと結婚させてくださいっ」


 ウィルが頭を下げるのに合わせて、私も頭を下げる。

 

「こちらこそ・・・娘をよろしくお願いします」


 頭を上げると、お父様もお母様も嬉しそうな顔をしていた。

 お母様は少し涙を浮かべていて、私まで泣きそうになってしまう。

 そんな顔を見ていたら、お父様とお母様との思い出が蘇ってくるけれど、どれも幸せな思い出ばかりだ。

 私も涙目になって、お母様、そしてお父様の順に抱きしめて貰った。


 本当に二人の親としての愛情はどんな谷よりも深く、私はとても幸せだった。そして、二人のような人になれるように頑張ろうと心に誓った。



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