第14話

「魔法使いさん・・・そんな言い方止めて」


 私は魔法使いさんの背中を抱きしめた。

 これは恋愛感情ではない。

 これは・・・母親が息子に向けるような慈愛の気持ちだ。


「魔法使いさんだって、人間だよ。みんなと、私と同じ赤い血が通った人間だよ」


 そう言うと、魔法使いさんが振り向こうとするので、私は腕を離すと、魔法使いさんは、


「ありがとう、ミーシャ」


 と言って、私の頭を撫でる。

 魔法使いさんの撫でている顔は、泣き出しそうな男の子の顔にも見えた。


「うむっ」


 裁判官は大きく頷いて、2人の裁判官とアイコンタクトを取ると、二人とも中央のガベルを持った裁判官に頷いた。


「判決を言い渡す。聖なる乙女、ミーシャを無罪とする」


 カンカンッ


「あなた・・・」


「あぁ・・・」


 お母様とお父様がそれを聞いてほっとして、涙を流しながら抱き合う。


 

 パチ・・・パチ・・・パチっ


 拍手の音がするのを見ると、子どもたちだった。


「へへっ」


「おめでとう」


 パチパチパチパチパチパチ・・・


「みなさん・・・」


 大人たちも拍手をしてくれた。

 大人たちは清々しい顔をしていたのもあったけれど、も子どもの前でも素直に表現できるのがなんだか楽しそうだった。


「なっ・・・」


 アレクは少し不満そうに裁判官を見るけれど、裁判官は確固たる意志を持ってアレクと目を合わせた。


「くっ・・・」


 アレクも刺々しい感じが少し丸くなったようで、それ以上は言わなかったし、何もしなかった。

 隣にいるリリスは不満そうだったけれど、彼女が煉獄の炎で身もだえていた時に消火するために近くまで来ていたお父様が、お母様とのハグを止めて、頭を撫でると、仕方なさそうな顔をしていた。


「さて・・・、聖女ミーシャよ」


 一番偉い裁判官が私に優しい声で話しかけてくる。


「はい」


 アレクから解放されて自由に話そうとしている裁判官を見て、私も嬉しくなって返事をする。


「もしかしたら、我々は罪人かもしれんが、我々を導いて救ってくだされ」


 もちろんです、と答えようとすると、


 ゴロゴロゴロッ・・・


「ん? 天気がいいのに、カミナリの音がするぞ!!」


 男の子が雷雲を探して空を見上げているけれど、今日は晴れの日で、ヒツジ雲が少ししかない。


「ふふっ、ミスター。どうやら、甘え過ぎは神様が怒るみたいですよ」


 魔法使いさんが笑いながら私の代わりに応えた。


「それは・・・残念じゃが・・・仕方ない」


 裁判官も空を恐る恐る見ながら、諦めた。


「よし、じゃあ、晴れてボクと同じ自由の身だね、ミーシャ」


 嬉しそうにいう魔法使いさん。

 魔法使いさんの魔女狩り裁判が始まってもおかしくない気がするけど、みんないい雰囲気で気づいていないようだから黙っておこう・・・。

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