第5話
「おい・・・」
アレクが裁判官を睨むけれど、裁判官は屈しなかった。
「もう一度、問う。ミーシャよ、キミは魔女か?」
裁判官が私の目を真っすぐと見て、質問を向ける。
「いいえ、魔女ではありません」
私ははっきりと伝えた。
「でも、魔法が使えるでしょ!!?」
リリスが私に向けて、大声を出す。
「・・・妹リリスが言うことはまことか、ミーシャよ」
「・・・」
「早く答えなさいよ、この悪女っ」
私だって死ぬのは怖い。
完璧人間でもない。
だから、答えることができず、何か弁明できる方法を考えていた。
だけど、なんにも浮かばなかった。
私はちらっと、リリスを見ると、無言の私を見て、リリスは興奮した顔をしながら勝ち誇った顔を浮かべる。
(小さな嘘でも、嘘を重ねれば・・・・・・うん。私はそうはなりたくない)
魔法使いさんに禁止されているから、魔法が使えない。
そういう意味で、魔法が使えないと言ってもよかったけれど、それは私の美学に反するし、そんなことを言う私は私自身が好きじゃないし、そんな弟子じゃ魔法使いさんの顔に泥を塗ってしまう。
「ミーシャ・・・ッ」
お母様が懇願するように私に声を掛けてくださる。
その短い言葉の中に、どんな形でも生きて欲しいという気持ちや、私への愛情がぎっしりと詰まっていて私はとても嬉しかった。
(でも・・・ごめんなさい)
「本当です、ですが・・・私は魔法で人を傷つけたことなんて」
「ははんっ、俺様が今傷ついている、貴様が魔法を使えることで、使える人間と結婚しようとしていたなんて・・・なんて、おぞましいっ」
アレンがそう言ってきた。
そう言われてしまえば、私は何も言うべきことはありません。
カンカンッ
裁判官は再びカベルを鳴らす。
「判決は変わらずだ、ミーシャよ。煉獄の炎に焼かれ罪を償えば、神もそちを天国にいざなうであろう」
裁判官はきっと私のことを理解してくれただろう。
同時に誇張表現とはいえアレクの証言や状況から、法律に則って判決を下した。
(悪法も・・・法なり)
もしかしたら、こんな世の中じゃなきゃ、私は無罪だったかもしれない。
こんな世の中じゃなきゃ、魔法使いは世界のために魔法を使ってみんなが魔法で幸せになっていたかもしれない。
けれど、今は今だ。
人の世に生を受けて、人の世を生きるのであれば法には従わなければならなない。
それが、法治国家だ。
それを超えた正義があるとすれば、あとは人の外のことわり。
神の裁きの時間だ。
(でも、あの炎はどう見ても・・・ただの炎)
聖書で読む聖火や煉獄の炎は煙がないか、もしくは描かれていても白い炎だというのに。
目の前のただの炎は黒い煙を出しながら、禍々しく燃えていた。
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