第4話

「・・・教えてほしいな」


 一人の農家の男性がぽつりと呟いた。

 

「ずっ、ずるいぞ。うちだって教えて欲しい」


 別の農家の男性が睨みつけるようにその男を見る。


「待ってよっ!!!」


 後ろから幼い女の子の声が聞こえるので振り返ると、たくさんの町の子どもたちがいた。


「ダメでしょ、来たら。死刑なんだから、子どもが見るものじゃありませんっ!!」


 その子の親だろうか。

 しゃがみ込んで、その女の子と目線を同じにして注意する。


「なんで、死刑って決まってるんだ~?」


 鼻水を垂らした男の子が不思議そうに言うと、大人たちは気まずそうに目を逸らす。


「ねぇ、なんで、なんで?」


 男の子は近くにいた男性のズボンを引っ張りながら、再び尋ねる。


「そっ、それは・・・」


 答えようとした男性だったが、近くの大人たちが視線を集めたのを見て、口ごもってしまう。


「そうだよ、ミーシャお姉ちゃんが悪い魔女なんかなはずがない」


「そうだよ、いつも優しいもん」


「勉強だって教えてくれるよ」


 子どもたちが近くの大人たちの顔を見上げて訴えるけれど、大人たちは子供たちと目線を合わせようとしない。


「みんな・・・」


 私は嬉しくて胸が熱くなった。

 私の心は幸福に包まれた。


(懐かしい気持ち・・・この気持ちは・・・魔法使いさんに会った時と・・・っ)


「いいえ、これが全てよっ!!!」


 妹のリリスがみんなの前に出て、大声で視線を集める。


「見てください。純粋無垢な子どもたちが、彼女に洗脳されていますっ!!! これは、ハーメルンの笛吹きと一緒です。お姉様を生き残らせれば、復讐にこの町から子どもたちを連れ去って殺してしまうでしょう」


(リリス・・・私があなたに何かしたかしら?)


 小さな罪を隠すためには大きな罪が必要だ。

 それを地で行くリリス。

 ちょっとした虚言を隠すためにどんどん大きな嘘を重ねているようだ。


 大人たちも、リリスと同じ。

 子どもたちの言葉を信じてしまったら、自分の過ちを認めてしまうことになるからだろう。

 だから、リリスの言葉が嘘くさくてもそちらを信じた顔をしている。


 子どもには、間違ったことをしたら謝りさいと言う。見え透いた嘘をつくな、下手な言い訳なんて通用しない、と教えているはずの大人たちが真逆のことをしている。そのせいで、私のお父様もお母様も、子どもたちもこの異質な雰囲気にとても困惑して焦っている。


「・・・キミは、魔法使いか」


 そんな状況を受けて、真ん中にいて、ガベルを持っている一番偉い裁判官が私に尋ねてきた。

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