第9話: どういうことなの……?


 ……。


 ……。


 …………と、まあ、そんな考えて向かっていたら。



「――む、そこの『稀人』! たしか……そうだ、白坊と言ったな! 何処へ急いでいるのだ?」

「あ、何時ぞやのお役人さん。一ヵ月前はどうも、中々過ごし易いところを紹介してくださってありがとうございます」



 以前、『実らず三町』へと案内した(いや、検分かな?)役人の人と遭遇した。


 着物姿に髷、腰に刺した長脇差(ながわきざし:刀のこと)。前もそうだったが十手(じって:要は警棒、役職の証でもある)は持っていない。


 本当に、姿だけを見ると正しく時代劇の時代に入り込んだかのような気分だ。


 まあ、そういう気分にさせられるのは、それだけじゃない。まさか、現役の御侍さんを見る日が来ようとは、この世界に来る前は夢にも……と、話を戻そう。



「ふん、そうか。あれから一ヵ月、町方奉行(まちかたぶぎょう:治安維持に関わる役人)の世話にもなっていないようだが、息災のようだな」



 ジロリ、と白坊を見やった役人……名は、たしか……佐野助(さのすけ)だったか?


 サラッと名乗られたので名字の方は忘れたが、たしかそんな名前だったような覚えがある。


 ていうか、下手に名前を間違えたら切られそうで、出来るなら会いたくなかった。まあ、そんな内心は億尾も出さない白坊である。



「日頃の行いのおかげか、今のところは怪我一つ、病一つしておりません――あ、もしかして、家賃とかの集金ですか?」

「いや、それは3ヵ月に一度で、お前のところは後2ヶ月先だ。今は、お前が鍬を片手に変な事をしていると噂が来てな……様子を見に行く途中だったのだ」



 ジロリ、と。向けられる視線に、白坊はクイッと背筋が伸びるのを実感した。


 おそらく……当人はただ視線を向けただけなのだろう。けれども、剣術を習い時には命がけで戦う武士の視線だ。はっきり言って、怖い。


 おまけに、武士というのは大なり小なり矜持が高い。仕方がない事とはいえ、何処が地雷になるのか分かったもんじゃないから、余計に。


 史実では泰平の世が長く続いた事で徐々に武士の立場は弱くなっていくが、それまでは生まれ持った特権階級……故に、ナチュラルに上から物を言う。


 本当に、当人たちにとって悪気は無いのが厄介だ。現代なら、確実にトラブルメーカーだろう。


 何せ、先ほどの彼の……佐野助の台詞一つとってもそうだ。非常に分かり難いが、彼なりに白坊の事を気遣っている。


 つまりは『冷たい眼差しを向けられてもめげずに頑張っているようで感心だぞ』という言葉を、遠まわしにしているだけ……分かるかぁ!


 ここらへんは武士の生き方というか、身分制度というものを客観的に、失敗や成功の記録を紙面にて勉強していたからこそ、言外の想いを察せられたわけである。


 まあ、佐野助を始めとして、だ。


 武士が高圧的というか上から物を言うのも、立場上そうせざるを得ないから。武士というのは、ナメられたらお終いなのだ。


 ……というのを白坊は分かっていたので、特に気を悪くはしなかった。いや、会いたくなかったのは事実だけれども。



「あ~、そうですか、すみません。やましい事をしているわけじゃないんで、いきなりひっ捕らえるのは止めてくださいよ」

「それは、これからのお前の振る舞い次第だ……ところで、その掲げている風呂敷はなんだ?」

「これですか? 色々頑張って採れた野菜ですよ。売りに行く途中だったんですけど、何処で売れば良いのか分からなかったので……門番に聞いたら、役所に行けって言われたんで、そっちに向かっている途中です」

「……今、何と言った?」

「へ?」



 ――おっと、地雷を踏んでしまったかな。



 ヒヤリ、と。


 声色もそうだが、佐野助の視線の色が明らかに変わった。今にも千切れそうなぐらいに張り詰めた……ように、白坊には見え――おっと、手を引かれたぞ。


 逃がさぬと言わんばかりに込められた握力。(やっぱ侍の腕力すげー……)軋む骨の痛みに顔をしかめながらも、手を引かれた先は町外れの……堀の傍であった。


 城を囲う堀は壁などで守られているが、外側にある堀にはそんなものはない。また、タイミングが良かったのか、釣り人の姿もなく、辺りには人の気配は無かった。



「さて、偽りなく話せ。どのようにして、事を成したのだ?」



 まあ、それも、辺りを見回して確認した佐野助の鋭い視線を受けて、そっと離れて行くだろうが。



「……話せ、と言われますと?」

「野菜が取れたと口にしたな。お前は、あそこがどのように呼ばれている場所か分かっているのか?」

「いちおう、由来は一通り」

「ならば、某(それがし)の驚きも察せられよう。手付かずのあそこには、上も常日頃勿体無いと考えていた場所だ。そこで作物が取れたとなれば、是が非でも上に報告せねばならん」

「……あ~、そうなりますか」

「そうだ。場合によってはお前も住む場所を変える必要がある……ところで、その野菜を改めさせてもらうが、良いな?」

「あ、はい」



 拒否権は、当然だが無い。


 言われるがまま風呂敷を開き、中の野菜を検分される。「見事な……」実物を見て驚いた様子の佐野助は、少しばかり土が付いた野菜を手に取り、丹念に見つめた後。



「白坊、案内せい。検分させてもらうぞ」



 と、命令された。白坊は、頷いて了承した。



(さようなら、今日の売り上げ……)



 もちろん、白坊の内心は泣いていた。


 始めての事だし、売れるかどうかは不明だが、検分に掛かる時間によっては今日の販売は無理になるからだ。


 別に明日行けばいいじゃんという話だろうが、思い立っての行動……それも上手く事が運んでいた時、それを無理やり止められてしまうストレスは半端ではない。


 なので、表向きは何も気にした様子も無く、内心では涙を流しながら佐野助へ毒を吐き続け……そのまま、『じたく』へと戻ったのであった。






 ――で、開口一番。



「前に見た時よりも大きく立派になっておるな」



 案の定と言うべきか、柵やら畑やらが追加されている『じたく』を目にした佐野助の最初の言葉が、それであった。


 その声色は、驚きが滲んでいた。隠しているつもりなのか、表情こそ相変わらずの鋭い目つきの仏頂面だが、声色までは隠せなかったようだ。


 いや、まあ、そうだろうなあ……というのが、白坊の本音であった。


 以前の検分の際、『稀人なので『じたく』という神通力があります』とだけ伝えていたので、家そのものは佐野助も知っている。


 しかし、それは以前の姿だ。今は、事実として、立派になっている。


 家の大きさこそ変わっていないが、一ヵ月ぐらいで柵と畑が増えていれば、驚きもするだろう。


 何せ何を成すにも手作業100%で作らなければならない文明レベルだ。


 現代みたいに電動工具でスパッと木材等を切り分けて、ズバッとワイヤーやら道具を揃えて、ハンマーでゴンゴン叩いて、はい完成……なんてのは無理だ。


 工具を揃えるのもそうだし、必要な木材を切り分けるのも手作業だし、縄一つ用意するのもそうだし、何なら釘だって一個ずつ作らなければならない。


 それは畑一つ作るのも同じ事。


 鍬で少しずつ耕し、小石や雑草も手作業で抜いていき、水を撒くのだって雨が降らなければ柄杓片手に数往復、広さによっては数十数百往復もするのだ。


 武士であっても与えられた自宅の庭に畑を持っている(実際、記録に残っている)ので、佐野助も畑を作る大変さは理解しているのだろう。


 だからこその驚き……思わず呆気に取られる佐野助の気持ちは分かるぞと、白坊は内心にて頷いていた。



(……たぶん、これを一人でやったって思われているんだろうなあ)



 まあ、1人でやったのは事実だけど……と、思っていると、我に返った佐野助が、「では、改めさせてもらう」そう言って畑への扉へと向かい……ふと、立ち止まった。



「白坊、畑へは入る事が出来るのか?」



 そう、振り返った佐野助の問い掛け……それには、理由がある。


 端的に述べるのであれば、最初の検分の際、佐野助は『じたく』の中に入ろうとしたのだ。



 だが、出来なかった。



 理由は不明だが、ある一定の距離にまで近づいた瞬間、どてん、と佐野助は尻餅を付いたのである。


 これには、白坊もそうだが、佐野助も驚いた。


 何せ、白坊は佐野助に触れていないし、佐野助だって誰にも触れられていないのだ。まるで、見えない誰かに突き飛ばされたかのような感覚だったとは、佐野助の弁である。


 普通であれば白坊はひっ捕らえられるところだろう。


 だが、明らかに困惑して驚いている白坊を見て、佐野助は『こやつの責ではない』と思ったようで……御咎めは無し。


 結局、『稀人の神通力は、八百万の神々の加護という話もある。迂闊に触れるのは止めておこう』という事で、治まったのであった。



 まあ、佐野助がそのような結論を出したのは、だ。



 白坊が『じたく』の機能を話さなかった(あと、浴室の扉は閉まっていた)のと、出入り口から見える内装が、あくまでも暮らす為の場所にしか見えなかったからだろう。


 これが明らかに常識の外にある光景であったなら佐野助の反応も違っていたのだろうが、見たままを語るなら……嫁を貰って暮らすには良いな、でしかなかった。


 ……まあ、そんなわけで、だ。



「さあ……俺には何とも。正直、何で入れないのかさっぱり分からないので……」



 白坊としては、そう答えるしかなかった。いや、実際、ミエは家の中に入れて、なぜ佐野助が駄目なのか分からなかったからだ。



「いや、責めているわけではない。とりあえず、扉を開けて外より検分を行うが、良いな?」



 もちろん、拒否する理由もないので、言われるがまま扉を開ける。柵に触れないように注意しながら、佐野助はジロリと畑の中を見回し……一つ、溜め息を零した。



「白坊、この畑が出来たのはどれ程前からだ?」

「えっと、今日です」

「――今日!?」



 その瞬間、ぐるん、と気持ち悪い動きで佐野助が振り返った。思わず、白坊はビクッと背筋を伸ばした。



「……某を謀っているわけでは、ないのだな?」

「そのような馬鹿げた事、わざわざする理由が俺にはありません」

「ふむ、確かに……では、あの実った作物は全て、今日の内に植えて、今日の内に実を付けたと言うわけだな?」

「俺も驚いていますが、その通りです。売りに向かう途中、佐野助様とばったりと出会い……な、わけであります」

「……毒は出ておらぬのだな?」

「さあ、それは俺にも……なんせ、今日出来たばっかりで。まだ、手を付けてはおりません」

「食おうとは、思わなかったのか?」

「食べるつもりでしたが、とにかく売るのに頭がいっぱいで……魚でも買って、晩は鍋にしようかと思っていました」

「なるほど、確かにアレだけ立派ならば、ただ焼いて食うだけでは味気ないものよな」



 そう言うと、佐野助は考え込むかのように腕を組むと、う~んと唸って……そのまま静かになってしまった。



 ……。


 ……。


 …………え、これ、放って置いていいの?



 正直、さっさと解放してほしいなあ……と、思っていると、「――よし、決めた」佐野助はようやく顔を上げた。



「白坊、その野菜、某に売ってくれ。銭は後日持ってくるから、今回はツケといてくれ」



 まさかの、買い付けの先取りである。これには、白坊も驚いて目を瞬かせた。



「え? あ、いえ、俺としては構いませんけど……何でまた急に? 俺が言うのもなんですけど、怪しいとは思わないんですか?」

「お前の事は、以前より密偵から話は聞いている。『稀人』ゆえに怪しい所はあるが、悪人ではない。それは、飯屋の美人姉妹の話からも察せられる」

「……あの、姉妹の事についてはあまり……その……」

「分かっておる。側室であり末席だとしても、娘が嫁入り出来れば武士の仲間入り。必死になる親の気持ちは重々に察せられるし、お前は姉妹を想って甘んじて侮辱を受け止めた。それを認めねば、名誉を重んじる武士の名折れよ」

「あ、はい……」



 ――あれ、これって諸々バレちゃっているような気がする。



 非常に気になるワードが出て来たが、下手に突くと藪蛇になりそうな気がする……止めよう、知らないままの方が良いのだろう。


 まあ、経緯は何であれ、だ。


 この役人……佐野助が買ってくれるのであれば、白坊としてはそれで良かった。御得意さんが居るならまだしも、今は誰もいないし、余計に。



 ……で、聞けば、とりあえずは風呂敷の分は丸ごと買い取ってくれるらしい。



 何でそんなにとも思ったが、どうやら白坊が育てた(と、言えるかは不明)野菜は、今の時期では中々見られないモノらしく、有ったとしても小さいらしい。


 なるほど……言われてみて、白坊は納得したというか、思い出した。


 種類や育て方によっては違うが、基本的に大根は冬野菜、茄子は夏野菜だ。カブは春と秋の野菜だが、今の時期はまだ小さく、出て来ても小ぶりで旨味は薄いだろう。


 加えて、何度か町中を見物しに行ったので薄々察してはいたが……やはり、野菜や果物は旬の物以外はほとんどない。


 矜持で腹が膨れないように、武士であっても美味い物を食いたいと願うのは当然の事。坊さんだって、肉は食うし女も抱くのだ。


 そう思えば、目の色が変わるという程でなくとも、心惹かれるのは当然の帰結かと、白坊は何となく納得した。



「この風呂敷も借りてゆくが、良いか?」

「構いませんよ。お支払いの時に持って来てください」

「あい、分かった。ところで、これらはいくらで売るつもりだったのだ?」

「それが、この町で商売なんてした事がないので……とりあえず、周りを見て、場合によっては相場より少し高めに売ろうかな……と」

「なんと、これほど立派なモノであれば、高めどころか相場の3倍でも売れると思うぞ」

「売れるならそれでも良いんですけど、それだと懐の寂しい人は買えないでしょう? 腹を空かすってのは、本当に辛い事ですから……」

「ほう、殊勝な心がけだな。と、なれば、某には高めの値段になるわけだな?」

「いえいえ、佐野助様は色々と気遣ってくれましたし、相場の値段でけっこうですよ。その代わり、また機会があれば相談に乗ってくだされば……」

「ふっふっふ、分かった。お前も中々に強かな男だ、悪さをせねば見逃してやるから、これからも悪事に手を染めずに励むのだぞ」

「はい、肝に銘じて!」



 ――下っ端役人とはいえ、個人的な繋がり、ヨシ!



 まあ、そんな白坊の内心を他所に、だ。


 何処となく笑みを浮かべているように見えなくもない佐野助は、風呂敷を背負って『実らす三町』を後にするのであった。






 ……。


 ……。


 …………だが、しかし、


 久しぶりに野菜モリモリ鍋(魚入り)を食えてご満悦な夜を過ごし、翌日。


 昨日と変わらず艶やかな野菜をスパッと切り分け、今日こそは売りに行くかなと準備をしていた……そんな時。



「精が出るな、白坊」

「――っ? おはようございます、佐野助様。こんな朝早くに何用でしょうか?」



 何故か、佐野助が家に来た。正確には、見覚えのない男というか役人が追加で2人も来た。


 いや、来るのなら来るで構わないし、お目付け役とまではいかなくとも、『稀人』である白坊の様子を見に来るのは分かる。


 しかし、いくら何でも早すぎる。だって、昨日の今日だ。


 追加で野菜を買いに来たとしても、あの量を……思わず、首を傾げながらも困惑の眼差しを向けるのは仕方がないだろう。


 佐野助もそれは分かっているのか、特に気にした様子も無く、挨拶もそこそこに……本題を切り出した。



「いや、実はな、昨日の野菜の件だが、話を聞いた上役(うわやく:要は、上司の事)と同僚が、な」

「……ああ、そういう事ですか」

「うむ、この時期にあれだけ立派なモノが食えるのは羨ましいと睨まれてしまったのだ。悪いが、今日も売ってくれぬか?」

「それは構いませんが……もしかして、後ろの二人は……」

「俺の部下だ、1人では抱えきれぬからな……安心しろ。上役からも強く言い聞かせているから、御無体な事を強要せぬ」

「はあ、そうですか」

「それと、ここにある野菜は出来る事なら他所には売らないでくれ。上役から、上様(うえさま:要は、組織トップ)へいくらか献上されると思うのでな」

「はあ、そうです――え、上様? えっと、あの、上様?」



 非常に聞き捨てならない単語に、思わず白坊はギクリと動きを止めた。それを見て、何を思ったのか佐野助は一つ頷くと。



「お前も知っていると思うが、信長様は目新しいモノが好きな御方だ。理由は何であれ、『稀人』は珍しい。もしかしたら、そのうち呼ばれるかもしれんぞ」



 爆弾を……少なくとも、白坊にとっては凄まじい爆弾が、前触れもなくドカッと佐野助より語られたのであった。



「……あの、一つ聞いていいですか?」

「なんだ?」

「今まで知らなかったのですが、ここって尾張(おわり)か近江(おうみ)ですか?」



 ――尾張は、尾張国の事で、現代における愛知県。織田信長が生まれ、その後、統一し、全国統一の一歩目となった場所。


 ――近江は、信長が最後に築いた安土城があった場所。安土城が有った場所は、現代では滋賀県に当たる。



「……いや、ここは江戸だ。なんだ、今まで知らなかったのか? 天下統一を果たした様が治める城だぞ」



 言われて、白坊は頷く。いや、江戸なのに信長ってなんだよと凪いだ頭で思いつつ、そのままもう一つ……いや、二つ。



「あの、もう二つほどお伺いしたいのですが、、この二つの武士は知っていますか?」



 途端、ざわっ……と、佐野助の背後に居た二人の顔色が変わった。


 けれども、「――落ち着け、『稀人』だから何も知らんのだ」それと同時に佐野助が二人を抑えた。



「……知っているも何も、と、だろう? いくら『稀人』とはいえ、周りの目が有るところで気軽に御二人の名を口にするものではないぞ」

「……あ、はい、キヲツケマス……」

「では、な。また明日、取りに来るから、他の者に売るでないぞ」



 結局、大きな風呂敷を一つずつ、ずっしりと重いソレを背負った三人の役人(The 侍)を見送った……後。



(――天下統一っておまえ、ゲーム終了後じゃねえの?)



 小走りで『じたく』へと戻った白坊は……胸中にて、頭を抱えた。


 何故なら、基本的に『剣王立志伝』のストーリーは天下を統一するまでの話である。


 言い換えれば、天下を統一した後……つまりは、エンディングを迎えた後の話、後日談は攻略本にすら載っていないのである。


 只でさえ時系列がさっぱり分からないというのに、これで更に分からなくなってしまった。ていうか、もうこれはアレだ、どうしたら良いのだ?



「……剣王立志伝の世界、マジで意味分からねえ……時系列どうなってんの?」



 誰にも聞こえないように、けれども、それだけを絞り出すように吐き出すと……気力が無くなった白坊は、その日の取引を終えることにした。



 ……ちなみに、この日もツケとなり、後日まとめてお金が支払われる形となった。



 まあ、ツケたまま逃亡される相手でもないし、トラブルも起きなかったので……結果的には良い取引なのかもしれない。


 数日後、野菜を全部売り払って空っぽになった畑を前に……そう、白坊は己を納得させるのであった。

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