第2話
テンはどこかの家々の真中に立っているように、テンの周りには五つの扉があり、その扉にはテンの目の高さにそれぞれ小さな窓がついていてその部屋の中がよく見えるのだった。
テンは余りの不思議さに息を吸うのも忘れる程、びっくりした。
その次に、きっとこれは夢なのだと思った。
今、自分はきっと夢を見ているんだ。
これは夢の中の世界なのだと思った。そう考える他ないのだ。
袋の中の世界は決して明るくはないけれど、包まれているようなホッと落ち着ける気がした。
テンの目の前にある扉には小さな窓がついていて、その窓を覗くと中には誰か人がいた。
若くもない女の人がいて、どうやらそこは台所のようだ。
一生懸命何かを料理している。美味そうな何かを作っている。
部屋の中はいかにも温かそうで鍋ややかんから湯気が上がっている。
テンがじっと見ていると、その女の人はテンに気がついて顔を上げてニコッと笑った。
とっても優しそうな笑顔だ。
それからまた熱心に鍋の中を掻き回し始めた。
次に右隣を向くとそこにも扉があり、扉の小さな窓を覗くと、お婆さんがコックリコックリ居眠りをしている。
そこは陽の当たる縁側のような明るい場所のようだ。
お婆さんの側には猫が二匹いてやはり心地良さそうに眠っている。
一匹の猫がテンの気配に気付いて目を覚まし、体をグーンと伸ばしてあくびをした後、
テンをじっと見つめている。
もう一匹も同じように起き出してテンに気が付いた。
ホワホワした二匹の猫は目をそらさずにテンをじっと見ている。
居眠りしていたお婆さんも目を覚ましてテンに気が付いた。
優しそうなお婆さんだ。テンを見てニッコリ笑った。
柔らかい温かい笑顔がテンの心を包んだが、お婆さんはまたコックリ、コックリ居眠りをし始めた。
左を見るとそこにも扉があり、その小窓を覗くと小さい男の子と小さい女の子が遊んでいるのが見える。二人がいるのは砂のある遊び場のようだ。
周りは広場になっていて気持ちの良さそうな所だ。
二人は一生懸命、砂を掘ったり、山を作ったり、溝を作ったりしている。
楽しそうだ。テンは遠い昔、どこかでこんな遊びをした事があるような気がして懐かしくなった。
二人の子供達はテンの視線に気が付くと、一緒に遊ぼうというように手招きをした。
だけどテンは笑いながら後ろを振り向いた。
そこにはもう二つの扉があり、その一つの窓を覗くと、
そこには若い男の人がいて一生懸命体を鍛えていた。
絶えず体を動かし、足を高く上げてはその足で目に見えぬ敵を蹴るような仕草をしたr、腕を右、左と前方に突き出して、やはり見えない敵をやっつけるような仕草を繰り返している。
若い男の顔や首からは汗が流れ落ちている。ひとしきり体を動かすと一息入れるのだろうか、側に置いてある水をゴクゴク飲んだ。
それから足元にある何かに語りかけた。優しい顔だ。
足元にいたのは可愛がっている犬だろう。犬はしっぽを盛んに振りながら嬉しそうだ。
テンに気付いたけれども吠えはしない。若い男もテンに気付いてじっと見ている。
その目は険しいがどこか爽やかな感じがした。
テンは最後の扉の窓を見た。
その窓から見えたのは年老いたお爺さんだった。お爺さんは机に向かって何か一生懸命、ぶ厚い書物を読んでいるようだった。
難しい顔をしているのを見ると、かなり難しい書物だろうか。その様子は真剣だった。
だが突然、ヒョイとこちらに顔を向けてテンの目を見た。
まっすぐにまともにテンを見た。
テンはドキッとして思わず目をそらした。
ここにはいろんな部屋がある。
自分がその気になればいつでも覗ける不思議な世界がある。
テンはもう一度深呼吸するとその五つの部屋を確認するようにもう一度次々と見てみた。
やっぱりその五つの部屋ではおばさんは料理を作り、お婆さんは居眠りをし、男の子と女の子は遊びに夢中で、そして若い男の人は体を鍛えるのに一生懸命で、おじいさんは相変わらず難しそうな顔をして机の上の本を読んでいる。
するとお爺さんは疲れたのか、フイと本から目を上げてこっちを見た。
じっとまたテンを見つめている。
テンはドギマギした。
お爺さんは何か話しかけた。
何と言ったのだろう。
口を動かして何かをテンに話しているが聞こえない。
テンは何を言っているのか聞こうとしてそっと扉を開けようとした。
扉は簡単に開いた。
「えっ?お爺さん。何とおっしゃったのですか?」
「そこに突っ立っていないで中に入りなさいと言ったんじゃ。」
「ありがとうございます。でも、入っていいんですか?」
「ああ、いいヨ。遠慮する事はないんだヨ。来たい時にはいつでも来なさい。だけれども入る前には扉を三度、トントントンとノックしておくれ。いきなりだとびっくりするからネ。」と言った。
「あっ、すみません。」
「今日はいいんだ。今日は私の方が気が付いたからネ。ところで…。」
「ああ、はい。僕の名前はテンと言います。」
「ああ、知っているヨ。お前の事は何でも知っているヨ。
本当の名前は天子天水。生年月日も知っとるヨ。明治三十五年二月四日生まれだろ。」
「えっ?どうしてですか?」
「さあ、どうしてだかナー。私にもそこの所はよく解らないが、お前の事はとにかく何でも知っているのだヨ。少なくともお前が知っている事は何でも知っているヨ。」
「じゃお爺さんは僕が何故ここに一人ぽっちでいて学校にも行けないのかそれが解りますか?」
「テン、それはお前の知らない事だから私にも解らないヨ。」と残念そうに言った。
「けれどもテン、お前の深い事情までは解らないが、お前がこれからどうしたらいいのかは相談に乗ってやれるかも知れないヨ。
私はずっとずっと長い事、この部屋で難しい本と向かい合ってばかりいたから世間の事はよく解らないがネ。本にはいろいろ為になる事が書いてあるから参考になるんだヨ。」
「ここから外に出る事はないんですか?」
「ないネ。」
「ここを出たいと思わないんですか?」
「思わないネ。」
「どうして?
一つ部屋に閉じこもっていたら外に出たくなりませんか?」
「テン、お前はおかしい事を言う子だネー。ここは私にとって最高の場所なんだヨ。
ホラ、御覧。この蔵書の山を。」
テンが言われてお爺さんの部屋を見渡すと、お爺さんの座っている机と椅子の周りとテンが立っている所以外は、分厚い蔵書に埋め尽くされている。
しかも天井高くどこまでも整然と積み上げられているのだった。
驚いて天井を見上げていると、
「どうだテン。これは知識の山だ。
私はこれらを読むのが楽しくて楽しくて堪らないのだヨ。
いくら呼んでも飽きる事はないんだ。本は素晴らしいぞ。
だから、食べる間も寝る間も惜しんで、こうして本を読んでいるという訳サ。」と言った。
テンは驚いて、「お爺さん、おナカは空かないのですか?」
「そうさなー。大昔に食べた記憶があるが夢中で本を読んでいるうちに少しも腹が減らなくなってしまったんだヨ。」
「それじゃ眠くはないのですか?」
「そうさなー。大昔に眠った事があるが本を読むのが面白くていつの間にか眠るのも忘れてしまったヨ。」
「へー?そういうものですか?」
「だけどテン、たまにはお前と話をするのも悪くはないネ。また気が向いたら遊びにおいで。トントントンと扉を三度ノックするのを忘れちゃいかんぞ。礼儀だからナ。」
「お爺さん、読書のお邪魔をしてすみませんでした。また来ます。失礼します。」
扉を閉めてもう一度窓を覗くと、お爺さんはまた机の本に向かって難しそうな本を熱心に読んでいる所だった。
本ってそんなに面白い物なのか?
食べる事も寝る事も忘れるくらい面白い物なのだろうか?
他の部屋はどうだろうと隣を見ると暗くなっている。
もう皆、眠ってしまったんだろう。
テンは帰る事にした。
帰るって?どこに?
そうだった!テンは袋の中の世界にいるんだった。
辺りを手探りして袋の端のようなものを見つけて、そこから外に出ると元の土蔵の中にいるテンだった。
傍には穴の沢山開いた薄汚れた袋があるばかりだ。
何だか狐につままれたような、あるいはうたた寝をして短い夢を見ていたようなそんな気分だった。
だけどこれが夢だとしても、この袋はテンに不思議な夢を見せてくれる宝物だ!
これはテンに授かった袋だ!
テンの心はワクワクして来た。
何だか明日が待ち遠しい気持ちになって来た。
僕は頑張るぞー。何が何だか知らないが元気が湧いて来た。
あのお爺さんは僕の事を知っていると言った。
急に勇気が湧いて来るような気がした。
テンはその夜、満足してぐっすり眠った。
次の日、朝目を覚まして土蔵の戸を開けると、下女が朝食を置いて帰る所だった。
テンはその後ろ姿に向かって、
「いつもごはんを運んで下さってありがとうございます!」と大きな声で言った。
若い下女は驚いて振り返ってテンを見た。そして又
慌てたように帰って行った。
だが、テンは少しも気にならなかった。
お礼が言えたのだから満足な気持ちになった。
お世話になったらお礼を言う。
それは当たり前の事だから…。
それからテンは朝ご飯を食べた。ご飯はまだ冷たくなっていなかったし、味噌汁もまだ少し温かかった。
今までと同じ代わり映えのしない朝ご飯だったが、今朝もゆっくり一口を何十回も噛んで食べた。本当に有難いと思った。
お父さんもお母さんもいなくて今じゃ五助爺もいなくなったテンが、こうして生きていられるのはこの朝と晩のご飯のお陰なのだ。
まだ何が何だか解らない事ばかりのテンだが、まずは感謝する事から始めようと思った。
良い神様はきっと見ていて下さる。
テンが毎日どういう風に考え、どう生きているかを必ずちゃんと見ていて下さる筈だ。
現に昨夜の読書に熱中していたお爺さんだって、テンの事は何でも知っていると言っていた。
急にいろいろ思いついて、ご飯もよーく噛んで時間をかけて食べると満足感と満腹感で体に力が湧いて来た。
表に出ると久しぶりに井戸端に行って顔を洗った。
いつもは土蔵の中でグズグズして外に出ると、少し離れた井戸端には下女が洗い物を持って来て、テンはそこに行って顔を洗う勇気がなかった。
だけど少し早く起きて早くご飯を済ますと、井戸の所には誰も来ていない事が解った。
なんだ、この時間ならまだ井戸端は空いているのか。
テンは大急ぎで口をすすいて顔や首を洗ってサッパリした。
今日はいつもと同じ日なのに何だかいつもと違って気持ちがいい。
早めに工場の方へ出掛けた。
監督にもお礼を言おう。
あの人は山賊のように恐い顔をしているけれど心のあったかい人だから…。
でも人の目のない所で気を付けてお礼を言わなければ迷惑をかける事になる。
テンが工場へ行くと、監督が工場の裏のあの森の方から来る所だった。
監督!おはようございます!
テンが元気良く挨拶すると、監督は驚いたようにテンを見て、それから素早く辺りを見回すとテンの所に来て、テンの明るい顔をシゲシゲと見た。
それから早口で、「テン、お前の人生はお前だけのものだ!!この意味解るか?
いいかテン、お前が自分で自分の道を切り開いて行くんだぞ!!
片付け仕事が終わったら後はお前の時間だ。どこへなり
行って構わない。
この森をずっと行くと抜けた所に川が流れている。
その川の土手に沿って行けば教会というものがある。
まずそこへ行ってみろ!!
いいか、これはお前が自分でブラブラ考えてする事だ。
それについて俺は何もお前の力になってやる事は出来ない。
もしもダンナや他の人間に聞かれたら、どこをほっつき歩いているんだかしょうの無い奴だと言うだけだろう。
それでもいいか?お前は自分の道を自分で切り開いて行くんだぞ!」
そう言った後すぐに何もなかったように監督は行ってしまった。
丁度、仕事に出て来る二つの人影が見えた。
それを見つけると監督はその人達に向かって、オーッと言って手を上げた。
テンは昼飯時までに木屑の片付けや工場の中まできれいに掃除をした。
昼時近くになると監督から何も言われなかったが、人の目のないのを確かめて森の中に入って行った。
大きな木は今日もテンを待っているように、そこにズンと根を張って立っていた。
テンは木に両腕を回していつものように耳を当て、コーッという音を聞いて木に話し掛けた。
「お前は偉いネ。しっかりこの地に根を張って生きている。お前は僕のように弱虫でフラフラしていない。
僕もいつか大人になったらお前のようになれるかナー。お前によく似た人を知っているんだヨ。」と言って昨日会った袋の中のお爺さんを思い出した。
大きな木は言葉は話さないが、テンの心の中を解っているような気がした。
切り株に腰掛けてふと倒木の陰に置いてある石板と石墨を取ろうとすると、そこに紙包みが置いてあった。
監督だ!
朝、監督がここに置いてくれたんだ!
くしゃくしゃに丸められた、まるで大きな紙屑のように見せた紙包みの中には大きな握り飯と黒砂糖の塊が入っていた。
テンは嬉しくて有難くてその握り飯をよーく噛んで食べた。
食べながら目と鼻から涙と鼻水が流れ出るのが解った。
この鼻水は丁度、味噌汁代わりだナーなんて愉快な事を考えながら、嬉し涙で食べるおにぎりはとても美味しかった。
食べ終わって涙と鼻水を拭うと、朝の言葉が蘇った。
監督が真剣な目で、
「テン、お前の道はお前が自分で切り開いて行くんだ!!」
その言葉が耳の後ろからグワングワンと響いて、テンの背中を押した。
そうだ、行ってみよう!
テンはまだこの森の奥深くまで行った事がなかった。
今までは昼時を過ぎたら工場の方へ戻らなければならないと思っていたからだ。
けれど、誰に何と言われたっていい。
今日はこの森の奥へ行ってみよう!と歩き出した。
高い木々が立ち並ぶ森は、奥に入るにつれて増々シーンとして少し薄暗く十歳のテンにしては心細かった。
それまでのテンはどこにも一人で行った事がなかったからだ。
自分の住む土蔵と工場の辺りしか知らないのだった。
今まではそこを出たが最後、自分が戻る所がないような気がしていたからどこにも行く事が出来なかった。
だがテンは勇気を出して、一歩一歩奥へ歩いて行った。
これが自分の新しい道なんだ。
僕は今、自分の足で自分の道を切り開いているんだと自分に言い聞かせた。
そう思うと冒険に出るようなワクワクした気持ちになった。
何も恐くないぞ!
何が恐いものか!
そう自分に言い聞かせてズンズン歩いて行った。
ズンズン、ズンズン歩いて行った。
すると突然、前の方が明るくなって来た。
足はいつか小走りになっていた。
そして突然森を抜けた。
そこは野原が開けていて、サワサワと草が気持ち良さそうに揺れている。
あっ川が流れている!
テンは川沿いに歩いて行った。ズンズン歩いて行った。
何か新しい見知らぬ世界に飛び込んだ興奮を覚えて、緊張のせいか鼻息も荒く歩いて行った。
思えば五助爺がいなくなってから、どうしたらいいか解らず何故か土蔵の所から離れられず、土蔵の見える所までしか行く事が出来なかった。
いつ爺が帰って来てもすぐ解るように、あの周りをウロウロしてばかりだった。
心細くて、誰かに話し掛けて貰いたくて、だけど誰もテンを見ようともしない。
テンに話し掛けてくれる人は一人もいなくて皆、テンがここにいる事も気が付かないように無頓着で、テンが近寄って爺の事を聞こうとしても誰もが逃げるように行ってしまった。
どうしたの?と一言聞いてくれる人もいなかった。
これからどうしたらいいのか。
爺を探しにどこへ行ったらいいのか解らずに、もしもここを離れでどこかに歩いて行ったら、もう戻れないような気がして心細くて、土蔵の近くから離れた事がなかったのだ。
だけど今、テンは初めて自分の足でここまで来た。
少し勇気を出したら違う世界が見えた。
それが嬉しくて嬉しくて、テンは思いっきり土手伝いを走って行った。
すると遠くに赤い屋根の先がとんがった建物が見えて来た。
あれが教会というものだろうか。
テンは思いっきり走ってそこに向かった。
壁が白い美しい建物だった。扉は開いていた。
テンは自分が来るのを知って扉を開いてくれているような気がしたが、恐る恐る中に入って行った。
椅子が両側に沢山並んでいる。
天井が高く、色模様の窓ガラスがとてもきれいで美しい。
初めて見るのに、でもどこか夢の中で見た事のあるような懐かしい気持ちもした。
これが教会という所か。何をする所だろう。
考えながら見ていると、
「いらっしゃい。」という声が聞こえた。
びっくりして見回すと、右奥の扉の所に日本人とは明らかに違う背の高い男の人がニコニコして立っている。
若くもなく年寄りでもない。
「初めてですか?」とその人は聞いた。
テンはお辞儀をして、「すみません。ここを通りかかって黙って入ってすみません。」と言った。
するとその人は笑顔のまま。
「いいんですヨ。ここは誰でも自由に来て良い所なのです。ここが初めてという事はここがどういう所か知らないのですネ。」
「はい。」と答えると、
「ここは教会といって…。」と説明しかけたが、
「そういう事はそのうち解る事です。あなたの名前を教えて下さい。私はここの神父です。」と言った。
テンは、「僕は、天子天水です。生年月日は明治三十五年二月四日生まれです。」と、緊張しながらも忘れないように繰り返し思い出していた生年月日を答えた。
青い目のその人は少し頭の中で計算してから、
「それでは十歳ですね。学校はどうしましたか?学校には行かないのですか?」と聞いた。
テンは少し悲しくなって、
「学校へは行った事がないんです。僕には親がいません。五助爺も遠くへ行ったまま帰って来ません。今は一人で土蔵の中に住んでいます。
誰も僕に学校へ行けと言いません。でも吉本のダンナはお客様に、テンは学校嫌いで学校へ行かせようとしてもあの通り行こうとしないで困っていると言っていました。
でもそれは嘘です。僕は本当は学校へ行きたい。
でもどうしたら学校に行けるのか誰も僕に教えてくれないんです。」
どういう訳かその優しそうな目を見ていたら、テンは思わず一気に話してしまった。
その青い目の神父さんは、深い優しそうな悲しそうな目でテンを見つめ、テンのほとばしるような言葉を静かに聞いていた。
テンは自分がどうして誰にも今まで話した事がない事を初めて会った人に話せたのか不思議だった。
あの監督にさえ話した事のない事を誰にも言った事のない心の内を話せたのだろうか?
自分でもその訳は解らなかったけれど、この人は自分の周りにいる人とは全く違う人だと思った。
この人には何を話しても、吉本のダンナに告げ口をする心配はないと本能的に思ったからだろうか。
神父さんは、「あなたの事は何て呼んだらいいですか?」
「工場の監督はテンと呼んでいます。」
「テン、あなたの食事はどうしているのですか?」
テンは朝と晩は土蔵の前に食事が置いてあるからそれを食べると言った。
「お昼はどうしていますか?食べないのですか?」
お昼は監督が人に知られないように紙包みにしたおにぎりをこっそりくれる事を話した。
「お風呂は?」
「ずっと風呂には入っていません。五助爺がいた頃は一緒に入って体を洗ってくれたけど、五助爺が遠くに働きに行った後は風呂に入っていません。
お膳を持って来た下女がクサイ、乞食のようだと言ったので川に入って体を洗って震えていたら、それを監督に見つかってそれから工場で木屑拾いをしています。
夏は服を着たまま川に入って体を洗いますが、寒い時は体を洗う事も出来ません。」
テンはこの人には本当の事を言っても構わないと思った。
神父さんは、テンを扉の向こう側に招いてくれた。
廊下があり、そのまた向こうの扉を開けると、いかにも居心地の良さそうな部屋があった。
「ここはいつも私が生活している場所です。遠慮はいりません。ゆっくりしていて下さい。」と言って、自分の為に用意していたのだろう。
きれいな容器から手のついた茶碗にお茶のようなものを注いで出してくれた。
「紅茶です。飲んだ事がありますか?」
テンが、「ない。」と言うと、
「最初は口に合わないかも知れませんが、紅茶の大好きな人は沢山います。
でも最初はミルクと砂糖を入れましょう。」と言って、ミルクと砂糖を入れて掻き回して出してくれた。
それはとっても美味しい飲み物だった。
「これも食べていて下さい。」
美味しそうなお菓子が置いてある。
「クッキーといいます。遠慮しないで沢山食べて少し待っていて下さい。」と言ってどこかに行ってしまいました。
暫らくしてから戻って来ると、
「テン、お風呂に入りなさい。用意が出来ました。こっちです。」と言って連れて行ってくれた。
清潔な風呂場には湯船に湯がナミナミと用意されていた。
「体を拭くタオルも下着も用意してあります。もしよければ上に着る服も用意出来ます。」と言ってくれた。
テンは本当に久しぶりに風呂に入った。
しゃぼんで顔を洗い髪も洗った。首も手足も全部しゃぼんをつけて洗って、首までお湯に浸かり五助爺を思い出した。
「五助爺、爺はもうテンの事は忘れたのかい?テンはずっとずっと爺の事を忘れないで待っているぞ!爺!」と五助爺に話し掛けると、また目から涙が出そうになった。
テンは急いでジャブジャブ顔を洗った。
テンの髪は伸び放題になっていた。その髪もきれいに洗ってサッパリした。
体を拭いて用意してあった新しい下着を身につけると、こんなに良くして貰っていいのだろうかと少し心配になった。
さっきの部屋の行くと神父さんはニコニコして、
「テン、お風呂の湯加減どうでしたか?良かったですか?」と聞いた。
「はい。あんまり久しぶりで五助爺の事を思い出しました。とてもさっぱりしました。
でも神父さん、僕はお金はありません。大人になるまでお礼は出来ません。
この下着のお金も払えません。」と言うと、
「何も心配する事はないのですヨ。教会という所はお互いが助け合う所です。」
神父さんはテンの山嵐のように伸び放題の紙を見て、
「もし良かったら髪を短く切ってあげましょうか?
それともそのままの方がいいですか?」と言った。
テンは、「急に何もかもきれいになったら、どうしたのか?誰が親切にしたのかと疑われます。このままでいいです。」と答えた。
「それでは伸びた髪はこの紐で結びなさい。」と言って紐をくれた。脱いでおいた服はどうしたのかと思ったら、洗って炊事場の上の方に干してあった。
きっと下の方で火をおこして乾かしてくれたものだろう。
何もかもさっぱりした物を身につけてテンは生き返った気持ちになった。
お礼を言って帰る時、
「テン、またここに来なさい。あなたが来たい時は毎日来てもいいのですヨ。
もしも来た時、他に人がいたら裏口から入りなさい。」と裏口を教えてくれた。
「ここはテン、貴方の家でもあるのですヨ。でも人間関係は複雑です。
ここへ来る事を知られるのが困るなら、よーく気をつける事です。
今度テンの希望が叶うように私も考えてみましょう。今日はもうお帰りなさい。気をつけて帰るのですヨ。」とまるで親しい身内のように言ってくれた。
外に出ると、陽は西に傾きかけていた。
テンは外に出るといきなり、しゃがんで足元の土を手に取ると、それをきれいにしたばかりの手と足と顔にこすりつけた。
それから安心したように元来た道を帰って行った。
その様子を青い目の神父はじっと見ていました。
工場の所まで来ると、テンは何事もなかったように木屑を集めて運んで、いつものように土蔵に帰って行った。
土蔵の前には夕ご飯が置かれていた。
それを持って中に入るといつものように食べ始めた。
ごはんは冷たくなっているし、味噌汁も冷めていたが、キャベツの煮物が心なしかいつもより多くなっているような気がしたし、沢庵はいつも二枚なのに今日は三枚になっていた。
些細な事だが、今日は良い事ばかりがあった一日だったナーと増々嬉しくなった。
ご飯を食べた後、隅にわざと丸めて置いてある汚い麻袋を手に取り、ためらいなくガバッと被ってみた。
やっぱりだ!夢じゃなかったんだ!
テンはまた、あの五つの部屋のある世界に立っていた。
それぞれの小窓を覗くと、子供達が遊んでいたり、お婆さんが居眠りしていたり、おばさんが一生懸命料理をしていたり、お爺さんは本を読むのに夢中だ。
若い男の人は今日も汗を流して体を鍛えている。
テンが凄いナーと見ていると、若い男がヒョイとこっちを見た。
テンと目が合うとニコっと笑った。
テンは急にその若い男の人と話をしてみたくなって、トントントンと三回扉を叩いた。
中の男の人は、入っていいヨというような口元をした。
テンが扉を開けて中に入ると、若者は「いらっしゃい。」と言って汗を拭いた。
足元の犬もしっぽを振っている。
どうやらテンを快く迎えているようだ。
「一生懸命鍛錬している所をお邪魔してすみません。」と言うと、
「いいんだヨ。気にする事ないヨ。丁度一休みしようと思っていた所だからネ。」と言った。
「僕、天子天水と言います。」とテンが言うと、
「知っているヨ。君の事は生年月日も知っているヨ。両親がいない事もネ。
それから五助爺がいなくなった事もネ。」と言って笑った。
「どうして知っているんですか?」
「さあ、どうしてかナー。テンがひとりぼっちで淋しそうにしていたら自然に解っちゃったという所かナー。」と笑って言った。
テンは安心した。この人も僕の事を知っていてくれた。
それで急に親しみを感じて聞いてみた。
「いつも運動してますネ。体を動かす事が好きなんですネ。」
「ああ、そうだネ。こうして体を動かす事が好きなのは本当だが、俺は強くなりたいんだ。
体を鍛えれば鍛える程、強くなるんだヨ。体の筋肉という筋肉がどんどん強くなって行くのが解るんだヨ。
テンもやって見ろよ。解るから。」
「でも、何の為にそんなに強くなりたいんですか。」
「そうだナー。何の為と聞かれたら困るんだけど、自分の為としか言いようがないナー。強くなると気持ちが安心するんだヨ。世の中の恐いものが少なくなるっていうのが本当かナー。別に誰と戦う為にという訳じゃないけど、自分が強くなったり素早く動けるようになるって事は、いつもビクビクしなくても済むんだ。
以前より余裕を持って生きられると思うんだ。
体が強くなると心まで強くなるような気がするんだ。まあ、実際試してみると解る事だけれどネ。
テン、君はまだ子供で解らないかも知れないけれど、世の中には悪い人は沢山いるぞ!
弱くてビクビクしていると、そういう奴はそういう弱い者を見つけてはどこまでもいじめぬくんだ。
そしてそういう悪い奴はどこにでもいるんだヨ。そういう悪い奴に限って、自分より強いと思う相手にはペコペコして手出しをしない。
俺は弱い奴にはなりたくないからネ。いつまでもいじめられたくないし、そんな奴と喧嘩もしたくない。
だからこうして体を鍛えているんだヨ。
テン、君もやってみろヨ。気持ちがいいぞ。体は丈夫になるし、恐いものもどんどんなくなるし、いい事だらけだぞ。
ホラ、俺のようにやってみろヨ。」と言う。
テンは真似してやってみた。
成程、体を動かすと何だか愉快で楽しくなって来る。
ずっとやってると汗もかいて少しフラフラして来た。
「どうだい気分いいだろう?嫌な事も忘れちまうぜ。」
誘われて一緒に運動したら、もうヘトヘトに疲れてしまった。
テンは、「お兄さんありがとう。僕、そろそろ帰るから。」と言うと、
「また来いよ。いつでも歓迎するぜ。」と見送りながら、
「それとテン、普段から走るのも大事だぜ。いつも心掛けて自分の体を鍛えてやるんだ。いいかテン!」
「はい、解りました。また来ます。」
扉を閉めて小窓を覗くと、もうお兄さんはまた練習を始めている。
その横顔は真剣でとっても強そうだ。
他の小窓を覗くと、どの小窓も暗くなっていた。もう皆眠ったのだろう。お爺さんも眠ったらしい。
テンは足元の裾をたぐりよせて袋から出た。
出て見ると、そこは土蔵の中でそこには穴の開いた汚い袋があるだけだった。
でもテンはそれについて、何故かとか夢かも知れないとか不審に思う事をやめた。
今はすがすがしい満足感があったからそれでいい。
以前のようにあれこれ考えて眠れないという事はこれからなさそうだ。
疲れて眠りに入る前に、明日から走ってみようかと考えたりした。
次の朝、ぐっすり眠れたので朝は気持ち良く目が覚めた。
昨夜のあのお兄さんの言った事を思い出していると、コトリと朝食を置く音がした。
テンは戸を開けて、
「いつも本当にありがとうございます!!」と後姿の下女にお礼を言った。
下女は一瞬立ち止まったようだったが、そのまま帰って行った。
朝食は心なしかご飯もおかずもいつもより多くて、そしてまだ温かく美味しかった。
テンは感謝してゆっくり噛んでいただいた。
おナカがいっぱいになると、心も満ち足りて今日も一日頑張ろうという気持ちが湧いて来る。
何だかこれからどんどん良い事が起こりそうな気がした。
もしも悪い事が起きてもそれを乗り越えて行けそうな気がした。
だって今じゃテンは一人ぽっちじゃないのだから。
土蔵の中には家族のような“袋の仲間”が待っているし、監督だって本当はテンの事を考えてくれるし、教会の神父さんだっていつでも来なさいと言ってくれた。
急に世の中が明るくなったような気がする。
とにかく自分に出来る精一杯の事をして、前を向いて生きて行こう!
テンは工場に出て行くと礼儀正しく、
「おはようございます。」と言った。
監督にも深々と頭を下げて、「おはようございます。」と言った。
監督がギロリとした目でテンを見たので、テンは他の人には解らないように目で少し笑った。
監督はテンの幽かな笑みを捉えたのか、ホッと安心したような顔をした。
テンは今まで以上にテキパキ体を動かして、木屑を集めたり、工場の掃除をしたりした。
そして自分の仕事が大体片付くと、人が見ていないのを確かめて森の方へ入って行った。
もう迷いはなかった。
森に入ったテンはゆっくり走り始めた。
昨夜のお兄さんの言葉を思い出しながら走った。
体を鍛えて強くなるんだ!
自分の体の筋肉が喜んでいるような気がした。
学校に行っていないテンだけど、走る事は自分一人でも出来る。
走っていたら何かと出会えるような気がする。きっといつか何かと出会えるに違いない。
そう思いながら森を抜け、川沿いの道を走って行った。
教会が見えて来た。
だが教会の前には何人かの人の姿が見えた。
テンはがっかりして遠くからそれを見ていた。
すると背中を見せていた神父さんが振り返り、テンに気が付いたようだった。
そしてお客様達に気付かれないように、さり気なく右の方を指さしたように見えた。
テンは最初それがどういう意味か解らなかったが、神父さんが指さす方へ行けという意味だろうと辺りをキョロキョロ見渡すと、高い草の中に右手に細い、あるかなしかの小道のようなものがあるのに気が付いた。
テンはどうせ他にあてがないので、その小道をブラブラと歩いて行った。
辺りはテンと同じ背丈程のすすきの原だ。
きっと教会の前にいる人々からテンの姿は見えないだろう。
今日は教会に行くのは無理かも知れない。神父さんも忙しそうだし。
そんなことを考えてブラブラ歩いているうちに開けた所に出た。
そこは教会の後ろの方に続いていたのだ。
目の前には昨日、神父さんに教えられた裏口の扉があった。
神父さんはこの道を通って来なさいと教えてくれたのだ。
それが解るとテンの心は急に明るくなった。裏口の戸は少し開いていた。
きっと神父さんはテンが来ると思って開けておいてくれたのだろう。
それともテンだけでなく誰でも入って来れるようにいつも開けてあるのだろうか?
そっと中に入る。
昨日、紅茶を御馳走になった部屋の扉をそっと開けてみる。
そこは部屋全体がテンを待っていたかのようにホッコリと温かく、紅茶とビスケットの香りがテンを迎えてくれた。
紅茶のポットの所に、“ひとりでこうちゃをのんでびすけっとをたべていてください!と書いた紙が置いてあった。
神父さんはテンでも読めるように簡単なひらがなで書いておいてくれたのだ。
テンは手の付いた紅茶茶碗に紅茶を注ぐと、そのまま飲んでみた。
昨日のようにミルクと砂糖を入れていない紅茶は最初美味しいと思わなかったけれど、この香りには何か懐かしい覚えがあった。
遠い昔、自分を大切にしてくれた優しい人の何かを感じさせてくれるような気がしたが、でもやっぱり何も思い出せないのだった。
傍のビスケットをかじって紅茶を飲むと、とても美味しかった。
神父さんはいつもこれを飲んでいるのだナーと思って、紅茶を一口、口に含んで目を瞑ると何ともいえぬ良い香りがして、その香りはやっぱり何だかとても懐かしい何かに繋がっているような気がして泣きたい程だった。
テンはそれが何なのか知りたくて何回も口に含んで香りをかいだ。
でも、どうしても思い出す事は出来なかった。
神父様が美味しいとおっしゃるから好きなのか、テンんが幼い頃を思い出せそうな香りだから好きなのか解らないけれど、テンは紅茶がいつの間にか好きになっていた。
暫くすると、
「随分、お待たせしました。」と言って神父様が入って来た。
テンの前に座ると飲んでいる紅茶を見て、飲めるのですか?と言ってニッコリ笑った。
「だんだん好きになっている所です。」とテンが答えると、その言い方がおかしいのかまた笑った。
そして、「ミルクと砂糖を入れましょう。」と言ったので、
「本当にこの香りと味が好きになりそうなんです。」と言うのに、
「無理しなくていいんですヨ。ここではテンの自然の姿でいて下さい。テンはまだ子供です。子供は子供のままでいる時間も必要です。
無理して急いで大人になる事はないのですヨ。大人になりたくないと思っていてもやがて大人になる時が来ます。
それまでは今のままのテンを大事に生きる事です。大人の人でもミルクと砂糖を入れた紅茶を好んで飲む人は多勢います。どうします?」と笑顔で聞いた。
テンは少し赤くなって、「やっぱりミルクと砂糖をお願いします。」と言った。
神父様は新たにミルクと砂糖を入れた甘い紅茶をたっぷり入れてテンに出してくれた。
「やっぱりこの方が美味しい。」とテンが言うと、
「そうです。その方が今のテンにふさわしいです。私がいなくてもミルクと砂糖は自分で入れて飲みなさい。」と言って、場所や紅茶の入れ方、温め方を教えてくれた。
それから神父様はテンをしみじみ見ながら、あれから色々考えて知り合いにも話し相談した事だと前置きして、
「テンは本当は学校に行きたいんですネ。」と聞いた。
テンは力強く頷いた。
「テンは本当なら学校では四年生になっている年令です。私の書いたメモ読めましたか?」
「はい。」
「じゃ読んでごらんなさい。」
「“一人で紅茶を飲んでビスケットを食べていて下さい。”」とテンが読むと、
「学校にも行かないのに、よくひらがなが読めるようになりましたネ。テンは偉いです。」と誉めてくれた。
「“いろはにほへと”は五助爺が膝に抱いていつも唄うように口ずさんでくれました。
でもその“い”という字や“ろ”という字がどういう字かは解らなかったんです。
だけど、監督がいろはをかいた紙を畳んでそっとくれたんです。
それを見ながら暗誦すると覚えるからと教えてくれました。
でもそれを監督から貰った事は絶対秘密です。もしも見つかって聞かれたら拾った事にするんだとそう言われました。
監督はとてもいい人なんです。。昼のおにぎりをくれたり、ここの場所を教えてくれたのも監督です。あの人は僕を人に知られないようにしながら、ずっとずっと気にかけてくれていたんです。見つかったら自分が仕事を失うというばかりでなく、自分がいなくなった後、僕が本当に一人ぽっちになる事を考えてくれてるんです。
僕はこの頃、その事が解りました。」
「テン、あなたの話を聞いていると監督さんの気持ちがよく解ります。
きっとテンがもう少し大人になって自分の力で何でも出来るようになるまでその人は、テンの傍にいてあげたいと思っているのでしょう。
テン、監督さんの気持ちを大事にして決して他の人に悟られてはなりませんヨ。神様は全て見ていらっしゃいます。テンの事も見守っていてくれます。」
そう言った後、神父さんは何やら道具を出してテンの前に広げた。
それは教科書という物で、ひらがなや漢字が書いてあるお手本のようなものと、算術と言って1・2・3が書いてあるものだった。
「これは一年生の教科書です。テンが覚えているものもあるでしょうが、最初から勉強しましょう。
この中にいくつか漢字も入っています。この漢字は私にとっても難しいもので、私も解らない字があります。
一年生で覚えなければならない漢字はこの教科書に書いてあるものです。
算術もそうです。これが全部解るようになったら、二年生に進みましょう。
そして二年生が終わったら、三年生に進みましょう。
だんだん難しくなって行きますが、テン、無理をしないでゆっくり勉強して行きましょう。
テンは賢い子供です。必ず皆に追いついて、やがて追い越す日がやって来ますヨ。
三年生の教科書に入ったら協力してくれると言っている人もいます。
その人はとても素晴らしいひとです。楽しみにしていて下さい。」と言って神父様はニッコリ笑った。
テンは嬉しくて目の前が明るくなった。
僕は勉強する事が出来るんだ!
そのようにして神父さんの所で勉強が始まった。
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