7日目
わたしの目の前には美しい女の死体がある
膨張し変色した顔面には蛆が蠢き、背面からは黒いてらてらとした液体が染み出し、全身から耐え難いアンモニア臭と腐敗臭がする。
それでも彼女は美しかった。
日が落ちて、買い物から帰ると近所に住む壮年の女性に訝しげな視線を送られた。
もしかしたら部屋に彼女がいることに気が付いているのかも知れない。それでも彼女があんなに美しい事は知らないはずだ、となぜか優越感が込み上げ笑顔で会釈をした。
女性はそそくさと立ち去った。
あとどれくらい彼女と一緒に過ごせるのだろう。
もはや現世に思い残すことはないと全身で訴える彼女。わたしはその邪魔をしないことで彼女を尊重したいのだ。そして許されるのならば最後の瞬間まで傍で見守りたいと願う。
ふいに彼女が瞬きをしたと思ったら、瞼の端から蛆が這い出るところだった。
悪戯に瞼を少しずらしてみる。
なんの抵抗もなく皮膚がめくれ、抜けたまつ毛が露出した真皮に張り付いた。
皮膚が腐敗ガスにより膨張しているため、眼球は奥深くに埋もれ、小さく萎んでいた。
かつて黒々とした宝石のような美しい瞳だった部分は、輪郭が白く浮き出てうっすらと青みがかり、白目の部分はぬらぬらと光を跳ね返す。
もし彼女と親しい人物をこの場に招いたら?
間違いなくここにいるのが彼女であるとは気が付かないだろう。
わたしはそれが堪らなく嬉しいのだ。
醜く崩れる美しい彼女。
ふいに笑いが込み上げてきた。
彼女以上に顔が歪め、わたしは声を殺し笑い続けた。
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