第67話 総力戦

 ミアンとの実力差を目の当たりにしてなお突撃してくる荒くれ者たち。

 ここまでやっても力の差が分からないというなら――その身をもって理解してもらおう。


「おらぁ!」

「でやぁ!」


 真っ先にぶつかったのはリゲルとレオンだった。どちらもスピードが自慢の剣士というだけあって、相手を翻弄しながら着実に仕留めていく。

 さらに意外な光景が。


「やるじゃないか、レオン」

「ふん。おまえもな」


 いがみ合っていたふたりが互いを認め合うような発言を口にしたのだ。特にリゲルの方は昔から成長を見守り続けている分、こうして他者の実力を認めて言葉にしたというのは精神的な成長が垣間見えて嬉しい。


 これでまた一歩、あいつは一流冒険者に近づいたな――というか、学園に入学しているから冒険者稼業には戻らないかな?

 などと考えているうちに、他の生徒たちも日頃の鍛錬の成果をいかんなく発揮していく。

フィナ、アデレート、ニコールの女子三人もそれぞれの持ち味を十分に発揮し、荒くれ者たちを蹴散らしていった。


 みんなの心にあるのは「学園を守りたい」というただひとつの純粋な願いのみ。それが原動力となって、次々と敵の数を減らしていった。

 

 面白くないのはブリングたち【星鯨】の幹部連中だろう。

 ご丁寧にもミアンが実力差をまざまざと見せつけたにもかかわらず、数で勝っているから押しきれるという安易な判断を下し、仲間を危機に追いやっている。


 ……そういう無鉄砲なところは昔と変わらないな。

 己を万能な完璧人間と思い込んでいるブリングには、なぜ自分の思い通りに事が運ばないのか、その理由が分かっていない。冷静に状況を分析できる力があれば、はじめからこの戦いが勝ち目のないものであると理解できたはずだし、何より【深海の太陽】に捨て駒のごとき扱いをされていることに気づいて引き返していただろう。


 せめて、優秀な参謀でもいればよかったが……欲と打算でつながっている今のあいつらにはそれも期待できないか。


「お、おい! おまえたちも加勢にいけ!」

「バ、バカを言うなよ……」

「あんたが行きなさいよね!」

「そうですね。こういった事態に陥ったのはすべてリーダーの判断ミス……責任を取るべきでは?」

「な、なんだと!?」


 ついには仲間割れを始めたか。

 ……しかし、もう遅い。


 生徒たちによって荒くれ者たちのほとんどは倒され、残った連中は勝ち目がないと悟って逃走をはじめた。


「て、てめぇら! 逃げるんじゃねぇ!」


 虚しい怒鳴り声が響き渡る中、ついに事態を聞きつけて騎士団が到着。

 逃げようとしていた者たちは漏れなくその場で拘束された。


「やれやれ……品のない連中だな」


 騎士たちを率いていたのはリチャードさんだった。


「ご無事ですか、ルーシャスさん」

「は、はい。なんとか」


 これでこの場は収まるだろう。

 残された問題は……ワイバーンか。

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