第68話 学園を守る戦い
学園を占領しようとしていたブリングたち【星鯨】の面々は漏れなく拘束された。
逃走した他の冒険者たちも、捕まるのは時間の問題だろう。
これで一件落着――と、言いたいところではあるが、そうもいっていられない問題がすぐ頭の上にある。
「あのワイバーンをどうやって倒すか……」
学園長の使い魔たちでは抑えきれない。
ならば……やはり、この場に集まった精鋭で迎え撃つしかないか。
「ルーシャスさんたちは避難を」
「いや、ここに残って戦うさ」
リチャードさんは逃げるように言ってくれたが、そういうわけにもいかない。それは俺だけじゃなく、周りの生徒たちも同じだった。リチャードさんも彼らの実力を知っているし、ほとんどの下っ端を撃退しているという事実があるため、戦力として計算したいというのが本音だろう。
――だが、今回の相手がこれまでとはわけが違う。
「しかし、相手はワイバーン……本来であれば、騎士団が総力をあげて相手をしなければならないほどの力を持っています」
「ならば俺たちで騎士団の総力に匹敵する働きをしてみせます」
騎士団でも有望株として知られるリチャードさんに真っ向からそう言い放ったのはリゲルだった。その強い眼差し――他の六人も同じような凛々しい顔つきをしてリチャードさんへ訴えかけるように見つめていた。
「君たち……分かった」
リチャードさんも覚悟を決めたようだ。
どのみち、現有戦力ではワイバーンの足止めはできても討伐は無理だろう。でも、リゲルやミアンが加わって戦力を増強できれば、状況を打破できる。
「みんな、ここからは今までの戦いと事情がまったく異なる。一瞬のミスが死につながる恐れだってあるんだ」
俺はこの戦いの持つ重要性を説いた。
正直、ここで臆して避難に回る生徒もいるかもしれないと思ったが、全員まったく怯える様子もなく、むしろより気を引き締めていた。実力もさることながら、負けん気というか度胸があるというか、こういった土壇場に強いメンタルを持っている。実に頼もしいな。
「王立学園の生徒でここまで肝が据わっているのも珍しい……おまけに、そんな優秀な生徒がこんなにも大勢いるとは」
リゲルやミアンの勇ましい立ち姿に、リチャードさんも目を細めていた。
……しかし、相手は心意気だけで倒せるほど甘くはない。
この場にいるすべての者の力をかき集め、それをぶつける。
活路を見出すにはそれしかないのだ。
こちらの戦う姿勢が整った時、ついにワイバーンが使い魔たちを押しのけて降下を始めた。
「来るぞ!」
リチャードさんの呼び声で、俺たちは戦闘態勢に入る。
この瞬間――学園を守る最後の戦いが始まった。
…………………………………………………………………………………………………
スローライフな新作をはじめました!
【噛ませ王子は気ままな辺境暮らしを望む! ~悪役王子に転生した直後に追放されたので、田舎暮らしを楽しみます~】
https://kakuyomu.jp/works/16817330652651184226
是非、読んでみてください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます