第65話 対決
【深海の太陽】にそそのかされて学園へと押し入ってきたブリングたち。
「下衆どもが……」
生徒たちの中で唯一彼らの人間性を知るリゲルは怒りに打ち震えていた。彼が【星鯨】を抜けた一番の要因がそれなので、ここでの振る舞いについても怒り心頭といったところだ。
一方、これが初対面であるミアンたちは緊張した面持ち。
その反応にブリングが目をつける。
「なんだぁ? ヤル気かよ、学生さんたち」
思いっきり見下しているな、ブリングは。
確かに、彼らは年齢だけ見ると集まっている連中よりもずっと下だ。――しかし、年齢と実力が直結するわけじゃない。少なくとも、レオンやアデレートたちが劣っているとは到底思えなかった。
「みんな、肩の力を抜くんだ。いつも通りの実力を発揮すれば、きっと勝てる」
振り返って呼びかけると、全員から不要な力みが消えた。表情が柔らかくなり、自信が湧き上がっているように映る。
思わぬ形での実戦となったが、学園を守るためにもここは退けない。
厄介なのは、上空のワイバーンだ。
学園長の結界魔法は健在だし、使い魔たちも応戦している。こちらへ直接被害が出るところまで来てはいないが、実力差を見ると時間の問題か。
ただ、現状、キュセロ学園長は病が悪化して戦線を離脱している状態。ヤツらはそれを見越して攻め込んできているのかもしれないな。
ともかく、バカげた革命などやらせはしない。
俺と生徒たちは侵入者を迎え撃つ覚悟はとうにできていた。
「力づくで分からせるしかないようだな」
「それはこちらのセリフだ、ブリング」
「ほざけ! 貴族のガキどもを引き連れているからとイキッてんじゃねぇぞ! 戦力差も考えられねぇのかよ!」
確かに、人数ではこちらが圧倒的不利だ。
――けど、こちらのひとり分はそちらの十人分以上に匹敵すると俺は考えている。
その中でも抜きんでた実力を持っているミアンは、ブリングの言葉を聞き終えるとわざとらしく大きなため息をついた。
「下品な男ですね」
「な、なんだと!?」
「弱い犬ほどよく吠えると言いますが、あなたはまさにその典型では?」
「こ、このガキ……! 吠え面かかせてやる!」
ミアンの言葉が引き金となり、ついに侵入者たちは雄叫びをあげながら俺たちへと襲いかかってきた。これに対し、真っ先に反応したのもミアンだった。
「私の大好きな学園でこれ以上の狼藉は許しません」
口調は静かだが、明確な怒りの感情が込められている。
次の瞬間、先頭を走っていた十人近くの男たちがいきなり発生した突風によってド派手に吹っ飛ばされた。
これはただの風じゃない――魔力によって生みだされた風だ。
「か、風属性魔法か」
「少々荒っぽくなってしまいましたが、初手としてはまずますではないでしょうか?」
「そ、そうだな」
ミアンの言う通り、効果は絶大だった。
集まっている者たちは、恐らくただの学生ってくらいにしか思っていなかったのだろう。本来であれば、貴族のご令嬢やご子息が戦闘に参加するなんてあり得ないからな。
――ただ、ここは違う。
この場にいる生徒たちは……ダンジョンのモンスターより数十倍強いのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます