第64話 望まぬ再会

 リゲルたちの活躍で、オークたちを全滅寸前にまで追い込んだのだが――そのオークたちを手引きしたと思われる人物が姿を見せ、俺は戦慄した。


 現れたのは、俺をパーティーから追放したブリングとその仲間たちだったのだ。


「ブリング……それにバランカ、ネビス、アリーも……」

「感動の再会――というわけにはいかんか」

「当然でしょう」

「まっ、あたしらが追いだしたわけだしね」


【星鯨】の主要メンバーが全員揃っている。その後から、続々と武器を手にした者たちが学園内へと侵入してきたのだ。

 ……どう考えても、入学希望者って面構えじゃないし、ましてや保護者でもないだろう。

 よからぬ企みを抱えて足を踏み入れた侵入者たちだ。

 そんな彼らを見回して感じたのだが……誰ひとりとして顔を知らない人物ばかり。ということは、【星鯨】の正式なメンバーではないということだ。

 もしかしたら、俺が追放されてから加わった者もいるかもしれないが、それはこの際どうでもいいだろう。


「ブリング! なんのつもりだ!」


 俺以上に怒っていたのはリゲルだった。

 彼はブリングたちのやり方に反発してパーティーを抜けたんだったな。そのままいれば今頃はエースとして――いや、そうなったらこうして対峙する事態になっていたか。


 リゲルから目的を問われたブリングは、不敵な笑みを浮かべながら答える。


「この学園はいわばお宝の山……革命を起こす舞台としては、これ以上に相応しい場所もないだろう?」

「革命……?」


 恐らく、【深海の太陽】が起こそうとしているクーデターのことだろう。

 ヤツらとの接点も問いただしてみるか。

 ただし、正面から尋ねたところで素直に答えるはずがない。ブリングもそこまでバカじゃないだろうからな。

 ――しかし、利用するには十分すぎるくらい沸点が低いという短所がある。

 そこをつけば、情報を手に入れるのは簡単だろう。

 なので、質問の仕方に工夫を加えた。


「噂では【深海の太陽】の傘下に入ったらしいな」

「……口を慎めよ、カスが。俺たちは傘下に入ったんじゃねぇ――同じ志を持つ者として手を組むことにしたんだよ」


 案の定、ブリングはこちらの挑発に乗ってきた。

 ここまで単純だと非常に助かるよ。


 俺は一瞬だけ振り返り、視線で背後にいるミアンたちにメッセージを送る。みんな、それを理解してくれたようで、臨戦態勢を解く。

 ――だが、さすがにこのままではまずい。

 次に俺が視線を送ったのは管理小屋――そこには学園長の使い魔であるラドルフがいる。あいつは事情を知らなければ、見た目は普通の猫だ。ブリングたちも気に留めることはないだろう。それを利用して、他の教職員たちへ事態の報告をお願いした。


 包囲網を整えつつ、時間稼ぎの意味も込めてブリングへさらに質問を投げかける。


「なぜ、この学園が宝の山なんだ?」

「分かりきったことよ! この学園には貴族のご令嬢や子息も多く通っているからな。そこを襲撃して人質とすれば、今後の交渉はやりやすくなる――俺たちはその大事な役割を任されているんだよ」


 誇らしげに語るが……結局は【深海の太陽】に使われている身じゃないか。

 さて、ここからヤツらはどう動くかな?

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