第63話 学園の危機
ついに学園を守る高い壁はモンスターの手によって破壊された。
現れたのは体長五メートルクラスの巨大なオークたち。
それがまたぞろぞろと……十体以上はいるか。
まだ増え続ける可能性もあるが、とにかく学生たちが相手をするには荷が重すぎる。
――だが、
「オークか……何度か戦ったことがあるな」
「ほぉ、どんな相手だ?」
「とにかくパワー任せ。モンスターらしく、本能の赴くままに襲ってくるんだ」
「知性の欠片もないということね」
「ある意味、やりやすい相手ではあるかな」
「でも、油断はできないよ」
「そうね」
リゲル、レオン、ミアン、フィナ、アデレート、ニコールの六人はすでにヤル気満々であった。自分よりも遥かに大きな相手だとか、すぐ近くにワイバーンもいるという熟練の冒険者でもそうそうお目にかかれない絶望的な状況でありながら、彼らの瞳には一切悲壮感というものを感じない。
確固たる自信と実力を持ち、学園を守るために戦おうとする姿勢……俺は彼らのたくましい背中に、この国の未来を見た気がした。
「師匠、これから俺たちはあのオークを討伐してきます」
「えっ?」
俺が彼らの勇ましい姿に目を細めている間に、どうやら話し合いがまとまったらしく、こちらの返事を聞かないうちに六人は駆けだしていた。
「あっ! ちょ、ちょっと待て!」
少し暴走しすぎではないか?
慌てて彼らを止めに走るが、まったく追いつきそうにもない。
そうこうしているうちに、先頭を進むリゲルとレオンがオークたちへ急接近。向こうもふたりの存在に気づいて迎え撃とうと手にした棍棒を振り上げた。
「まずい!」
敵の攻撃が来る――と、心配したのも束の間、オークたちは突然武器を手放し、さらには何もないその場で盛大に転倒するヤツまで出始めていた。
原因はすぐに分かった。
アデレートの従霊たちがリゲルやレオンに先駆けて攻撃を仕掛けたのだ。
……なるほど。
自分たちに注意を引きつけておきながら、アデレートに先制攻撃をさせるという作戦だったのか。
この作戦は見事に成功し、オークたちは何もできないままリゲルとレオンに斬られて絶命していく。さらに、ミアンとフィナによる魔法攻撃や、騎士としての才能が覚醒しつつあるニコールの連撃によって敵はどんどん倒されていく。
結果、五分も経たないうちに十体以上いたオークはその数を二体にまで減らしていた。
「す、凄い……」
そんな言葉しか出てこなかった。
実力はさるものながら、驚かされるのはその連携。学年やクラスが異なるものの、互いが互いの死角をうまくカバーし合い、オークたちに付け入る隙を一切与えなかった。ここまでスピーディーに事態が運んだのも、抜群のコンビネーションだからこそと言える。
ほとんど合同で鍛錬をしていなくてこれほどとは……末恐ろしいな。
一方、圧倒的な力の差を見せつけられた生き残りのオーク二体は、ついに怖気づいてその場から逃走を試みる。
――が、その直後、
「何をやっていやがる」
どこからともなく、聞き慣れた声がした。
それは、オークたちがあけた壁の穴がある方向から聞こえてくる。
「ようやく道が開けたと思って乗り込んでみたら……なんてザマだ」
吐き捨てるようにそう言ったのは――
「ブ、ブリング……」
「久しぶりだなぁ、ルーシャス」
俺を追放した張本人であるブリングだった。
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