第35話 共闘
アデレートの突然のダウン。
これにより、モンスター討伐よりも先に彼女を救出する方を優先せざるを得なくなった。
「リゲル! レオン! モンスターを頼む!」
「はい!」
「仕方がないか……おい、貧乏人。ここは俺に任せて引っ込んでいろ。邪魔をされたらかなわんからな」
「んだとぉ!?」
よりによって助っ人がこのふたりとはなぁ……ただ、先ほどの実習風景を見る限り、この状況を打開できそうなほどの実力を持っているのは間違いなくこのふたりだけ。あとはコンビネーションをしっかりしてくれたら文句はないのだが。
とりあえずここは任せておくとして、今のうちにアデレートを助けだそう。ついさっきまで元気そうだったのに、いきなり動きが鈍くなったのも気になる。
「大丈夫か、アデレート」
彼女のもとへ駆け寄ると、
「あ、ああ……男子が……」
「うん? 男子? リゲルとレオンのことか?」
「わ、私……男子が苦手で……」
「へっ?」
男子が苦手って……ひょっとして、突然従霊たちが消えたのもそこに原因があるのか?
――いや、待て。
俺とは普通に会話できてないか?
……細かいことはあとにして、今は逃げることが先決だ。
「立てるか?」
「は、はい……」
「よし、行くぞ。このままここにいたら、あの子たちも存分に戦えないからな」
なんとかアデレートを連れてその場を去ろうとした――が、ここで想定外の事態が発生。
「っ! 下がれ! アデレート!」
異変を察知した俺は、慌ててアデレートの腕を掴み、自分の方へと抱き寄せる。すると次の瞬間、大きく地面が盛り上がり、地中からもう一体のモンスターが現れた。外見はさっきのモグラ型モンスターとまったく同じ……同種の別個体というわけか。
「うおっ!? もう一体出やがった!?」
「よそ見をするな、リゲル! こっちの敵もまだ倒せていないんだぞ!」
「分かってる! いちいち指図すんなよ、レオン!」
いつの間にかお互い名前で呼び合っているリゲルレオン。
少しは成長したかと喜ぶよりも先に、この絶望的な状況をなんとかしなければ。
ここで、アデレートが戦闘に加入してくれると大変助かるのだが……どうやら男性恐怖症らしい彼女は未だに力を発揮できない状況にあった。
だったら――育成スキルの出番だ。
俺は二体目のモンスターの攻撃をかいくぐりつつ、アデレートとともに岩場の陰へと身を隠した。モンスターは俺たちを完全に見失ったようだが、見つかるのは時間の問題だ。
それまでに、育成スキルでアデレートの成長を止めている症状の緩和を図る。
「アデレート……君ならば、きっとあのモンスターを倒せるはずだ」
「で、でも――」
「待っていろ。すぐに力を発揮できるようにしてやるから」
俺は育成スキルを発動させると、彼女の肩にそっと手を触れた――直後、アデレートの体に青白く光る鎖が出現する。
「こいつはひどい……」
生半可な攻撃ではビクともしないだろう頑丈な鎖が、彼女の心を縛りつけていた。この鎖から解き放たれた時――男性恐怖症も消え去り、本来の力で戦えるはず。
ここからが、育成スキルの本領発揮だ。
「さあ……いくぞ!」
分厚い鎖を断ち切るため、俺はスキル能力を全開にする。
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