第27話 謎の女子生徒
リゲルやフィナがいる第二学年。
そこに所属する生徒や教職員をまとめる学年主任のシモンズ先生が俺のもとを訪ねてきた。最初は冒険者としての経験を活かして、ダンジョン探索演習の引率依頼だったが……その他にも育成スキルを使って見てもらいたい生徒がいるという。
アデレートという名の女子生徒だが、素行や成績自体に問題があるわけではなく……かなり厄介な魔法属性を有しているようだった。
その魔法属性とは――
「彼女は……死霊魔術師としての適性を持っているのです」
「し、死霊魔術師……」
これはまた予想外の属性が来たな。
死霊魔術師といえば、その名の通り、亡くなった死者の霊魂などを扱う魔法使いを言うのだが……内容からして、何かと敬遠されることも多かった。
シモンズ先生の話では、死霊魔術師は創設から百年以上という長い歴史を持つ王立学園でも過去に数人しかいないようで、対応に苦慮しているのが現実らしい。
俺も噂にしか聞いたことがなく、本物を見たことはない。
そんなわけだから、学園側としても彼女の力量を計りかねているところがあるようだ。
「我々もあらゆる手段を用いて彼女の力になろうとしてはいるのだが……適切な指導も難しい状況だ」
「……分かりました。どこまでやれるかは分かりませんが、俺にやれる限りのことはさせてもらいます」
「おぉ! 受けてくれますか!」
シモンズ先生は興奮気味に俺の手を握る。
正直、学園の教職員たちが総出になっても適切な対応ができないというのに、俺ひとりでどうこうできるとは思えない――が、期待されている以上、俺にやれることはしっかりやって学園に貢献しないとな。
シモンズ先生を見送った後、それまで静かにしていたラドルフが話しかけてきた。
「まったく、暢気なヤツにゃ」
「? どういう意味だ?」
思いがけない言葉にカクンと首を傾げる。
そんな俺のリアクションを見たラドルフは、ため息を漏らしながら続けた。
「とはいえ、そのアデレートって女子生徒が、周りから密かになんて呼ばれているのかを知らないのだから無理もないにゃ」
「どんなふうに呼ばれているんだ?」
「聞いて驚くにゃ――【死神】にゃ」
「死神……なるほど」
「そこは納得するところじゃなくて恐怖するところにゃ! どういう神経しているにゃ!」
ラドルフから抗議されるも、相手は死霊魔術師だからなぁ。そりゃそういう異名がつくのも仕方がないと言える。
ただ、本人がそれの呼び名をどう思っているのか……年頃の女の子だからな。気にしていないわけがない。
「死霊魔術師としての実力はどれほどのものなんだ?」
「そこまでは知らんにゃ」
「…………」
肝心な情報だけ抜けているのか。
まあ、その辺は教職員も掴みかねているようだし、ラドルフに求めるのは酷というものか。
「おい! 今とても失礼なことを思ったにゃ!」
「いやぁ、そんなことないよ」
「嘘にゃ! 嘘つきの目をしているにゃ!」
本当に変なところだけ勘が鋭いんだからなぁ……仕方ない。二年生を受け持っているというサラを飲みに誘っていろいろと聞いてみるか。
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