第17話 侵入者

 フィナの大活躍は闘技場を熱狂させ、今も彼女は観戦していた生徒たちから質問攻めにあっている。


 俺たちも彼女に何かひと言かけようと待っていたのだが、


「サラ先生! こちらにいらっしゃいましたか!」


 学園関係者と思われる男性が血相を変えながら駆け寄ってきた。どうやら、サラを捜していたらしい。その様子から……どうもよくない事態が発生したようだな。


「どうかしましたか?」

「じ、実は、学園街に不審な人物が侵入しまして……」

「し、侵入者?」


 ということは……あの厳重な警備をすり抜けて学園街に入ってきたのか?

俺もあそこを通ってきたが、そう簡単に突破できるようなレベルじゃなかったはずだが……相手はかなりの手練れらしい。


「今、デリスタ先生とノリス先生が対応に当たっているのですが、何せすばしっこい相手でして……」


 ようは増援の依頼というわけか。

 当然ながら、


「俺も行こう。戦闘では役に立てないかもしれないが、身を挺して誰かを守るくらいのことはできる」

「ありがとう。でも、無茶な行動は控えてよね」


 サラはそう言うが、俺の場合は多少無茶をしないと実力的に役立たずで終わるからな。

 彼女には心配させないよう「分かった」と答えておいたが、いざという時の覚悟は決めておいた方がよさそうだ。


 ちなみに、ラドルフは「危険なお仕事は任せるにゃ」と待機する意向。

 ……こういう場面こそ、監視の目が必要なんじゃないか?

 まあ、静かになって集中できるといえばできるけど。



 学園街に到着すると、思っていた以上に大騒ぎとなっていた。

 難攻不落――とまではいかないのだろうが、貴族のご令嬢やご子息のいる学園に不審者が侵入するなどあってはならない。そのための堅牢な守りを突破してきた相手だけに、騒然となるのも致し方ないか。


「おぉ! サラ先生! それに管理人のルーシャス殿!」


 俺たちに声をかけてきた人物は……見覚えがある。

 確か、この人がノリス先生だ。


「ノリス先生! 状況はどうなっていますか!」


 サラが剣を鞘から抜きながら尋ねる。

 すると、ノリス先生はため息を交えながら簡潔に状況の説明を始める。


「不審者は今、建物の屋根を移動しています」

「や、屋根? 随分と身軽なんですね」

「身軽というレベルではありませんよ。見た目は人間の少年ですが……あれはもう獣人族に匹敵する身体能力です」


 人間でありながら獣人族に匹敵する身体能力を持つ少年――あれ?


「な、なんか……どこかで聞いたことがあるような……」


 聞いたというか、そのような評価をした元仲間がいた。

 彼の名は――


「まさか……リゲルか?」

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