まいご

 あの日は雪が降っていた。この地域では珍しくも粉雪を美しく降らせていた。小さな私はそんな美しい雪に惹かれて、気付いたら外に出ていた。視界は雪にて不良、足元は滑りやすさ最高で最悪の地面。ただし、風は追い風。私の走るのを助けるようだった。寒さなんて忘れてた、意味も無く走った。走った。ただ、自分の欲の赴くままに、走った。あ――


「いてっ」

 転んだ。

 痛かった。

 起き上がった。

 起き上がったその時、やっと前以外の方向を見た。忘れていた寒かが一気にやって来た。どうすればいいのか分からなかった。走ってきた道なんて分からなかった。とりあえず今走っていた道を戻ってみた。空はすっかりと暗くなって、寒さは一層増してくる。見覚えの無い道。通りすがる人は私になんて見向きもしなくて、本当にどうすればいいのか分からなくて、もう、泣き出してしまった。


「ねぇ君、大丈夫?」

 道路の傍らでうずくまってると、そんな声がした。そこには白い服を着たのお姉さんが立ってた。

「だれ?」

 混乱していた私には、そんな程度の言葉しか出ない。

「そうだなぁ、私はゆき。君の名前は?」

菊乃きくの

「きくのちゃんか、どうしたのこんな所で。迷子?」


「おうちどこか分からないの?」


 そんなことを聞かれて、ただ頷くことしか出来なかった。


「そっか、じゃあ! 手、繋いでみて、ほら」

 言われるままに、雪さんの手を繋ぐ。

「あったかい……」

 繋いだ手は、いや、繋いだ手から何かが伝わってくる。身体の内側からあったまっていった。

「雪さん、これ……」

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